ホテルマンを経て知った、サービスの本質(Vol.3)
東向島珈琲店を立ち上げる前は、ホテルマンをされていたというマスターの井奈波さん。
「サービスに上も下もない」と語る井奈波さんがホテルで知った“サービスの本質”、そしてよい店にあるという“ACS”について伺いました。
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- サービスに上も下もない
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- 大井
- 井奈波さんはお店を始める前はホテルマンだったと伺いました。どうしてホテルマンになられたのでしょうか?
- 井奈波さん
- 両親が飲食店をしていたこともあり、サービスについて以前から興味を持っていました。「サービスという分野においてはホテルがトップ」そう思って、高校を出たあと、ホテルの専門学校で接客などを学び、実際にホテルで働き始めました。
- 大井
- サービスってすごく難しいですよね。実際、働いてみてどうでしたか?
- 井奈波さん
- 社会に出たのはそれが初めてだったので、必死でしたね。学んだことも多かったですが、年々ホテルマンとしての仕事の幅が広がっていくうちに、「サービスにトップも何もないな」と思うようになったんです。
- 大井
- というのは?
- 井奈波さん
- 要は“お客様が気持ちよくなることがサービス”で、それはホテルでも、例えば僕は酒場が大好きなんですが、酒場でもどこでも一緒。「サービスに上も下もない」そう考えるようになりました
- 大井
- なるほど。場所やシーンによってお客様が求めるサービスは確かに違っていて、その場に合わせた最適なサービスこそが重要だと思われるようになったのですね。ホテルマンをされていた井奈波さんがそこから珈琲店を開くきっかけというのは何かあったのでしょうか?
- スタッフとお客様に“繋がり”を持てるのがカフェ
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- 井奈波さん
- 自分で何かやりたいなとは思っていましたが、ホテルマンをしていたときはそれが何かは見出せていませんでした。「もう少し現実的に見えてきたら……」と考えていた頃に、たまたま今の奥さんとハワイのオアフ島に旅行に行ったんです。
滞在中は現地の小さなカフェに通っていたんですが、お店ではお客さんとスタッフさんがしゃべったり、うちの嫁が横でくつろいでいたり、おじいちゃんおばあちゃんが仲良くお茶をしていたり……。とにかく、そこで働いているスタッフとお客さんの距離感がすごくいいなと思ったんです。その距離感はホテルにはないものでした。
- 大井
- ホテルの距離感とはどう違っていたのでしょうか?
- 井奈波さん
- ホテルのスタッフとお客さんはそこまで密なコミュニケーションがとれないですし、「やぁ」と挨拶することもありません。スタッフとお客様の間にはちょっとした溝があって、でもカフェにその溝はなく“繋がっている”感じがしたんです。
「カフェってそういうものだよ」と言われれば、そうなんですけど(笑)。それは僕にとって衝撃的な体験でした。「こういう仕事もあるのか、これはいいなぁ」と思って、日本に帰ってきてすぐ高山珈琲に入りました。
- 大井
- 数あるコーヒー店や喫茶店の中でも高山珈琲を選ばれたのはなぜですか?
- 井奈波さん
- まずお店をやるならコーヒーをちゃんと淹れられるようになりたいと、コーヒー専門店を回っている中で、高山珈琲に出会いました。雰囲気もすごくよかったし、「この美味しいコーヒーは絶対にたくさんのお客様に喜んでもらえる」そう思ったのがきっかけです。
- 大井
- 井奈波さんが考える高山珈琲の最大の魅力はどんなところでしょうか?
- 井奈波さん
- やっぱり高山、本人でしょうね。コーヒー専門店の教科書みたいな感じなんですよね。
- 大井
- それは、コーヒーの淹れ方に関してですか?
- 井奈波さん
- コーヒー店をやるにあたって、コーヒーの淹れ方はもちろんですが、ホテルやサービスの業界で大事と言われる“ACS”も網羅していてバランスが良いと思ったんです。
- ACSから学ぶ、よい店の条件
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- 大井
- ACSとはなんですか?
- 井奈波さん
- Accommodation(アコモデーション)、Cuisine(キュイジーヌ)、Service(サービス)のことです。アコモデーションは内装、キュジーヌは料理、そしてサービス。ACSが正三角形になっているのがいいお店だと言われています。
ホテルにはホテルのACSがあり、酒場は酒場の、カフェにはカフェのACSが絶対あると思っていて、どこかが欠けるとバランスが悪くなるんですが、高山珈琲はそのバランスがすごく良いと思いました。だから、そのバランスを維持できるように、よりよくなるように必死で関わっていたという感じです。
- 大井
- 東向島珈琲店でACSを表現して頂くとどのように表現されますか?
- 井奈波さん
- アコモデーション(内装)は、木を基調としたこの店内。ゆったりした空間で落ち着いて過ごしていただきたいので、自然のものをいっぱい使っています。キュイジーヌ(料理)は“安全安心”の素材。「何を提供していますか?」と聞かれたら、“美味しいもの”の前に“安心安全”ということを重視しています。
- 大井
- サービスについてはいかがですか?
- 井奈波さん
- 何かを食べて、ゆったり過ごす……その先に何かもうちょっとあるような気がしていて、それを提供できるといいなと思っています。
当然、美味しいコーヒーが飲みたい、ゆっくり本を読みたいと、お話ししたい、とかそういう目的があって来店いただくのだと思うんですが、それに満足していただくというのは完全に当たり前のことで、絶対的なミッション。その先に、例えば、「明日も頑張ろう」と思えたり、なにかプラスの役割や、ポジティブになれる何かを1つ提供できたらと思っています。
- 大井
- 井奈波さんの考えるサービス、とても素敵ですね。想定内の期待値を飛び越える何かが人の心を動かしたり、新しいエネルギーを生む。私もそう思います。
- この続きは、Vol.4で!次回の公開は12月9日(金)です!どうぞお楽しみに!
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