バリスタを育成するブルーボトルコーヒーのトレーナー(Vol.1)
CafeSnap発案者の大井がお話をお伺いしているプレミアムコラム。第23回目にお迎えするのはブルーボトルコーヒーのトレーナー、藤岡 響さんです。
2016年、新たに4店舗をオープンし躍進を続けるブルーボトルコーヒー。10月にオープンした中目黒カフェにはトレーニングルームが併設され、バリスタ未経験の人も多く採用するなど“バリスタの教育”にも力を注いでいます。そのブルーボトルコーヒーの中で、全バリスタのトレーニングを担当しているのが藤岡さん。今回はトレーナーという仕事についてお話を伺いました!
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藤岡 響さん
ブルーボトルコーヒーのトレーナー。約10年前にイタリアンバールスタイルの飲食店で働き始き始めたことをきっかけに、独学でコーヒーの勉強を開始。様々な新規店舗の立ち上げに関わり、日本のコーヒー文化の成長とともに、自らもトライ&エラーを繰り返しながらバリスタとしてのキャリアを構築。2015年ブルーボトルコーヒーに入社。バリスタ歴11年。
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- バリスタや全スタッフにコーヒーの知識や技術をレクチャー
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- 大井
- ブルーボトルコーヒーの方でコラムに出ていただくのは創業者のジェームス・フリーマンさんに続いてお二人目ですね。今日はよろしくお願いいたします。
藤岡さんはブルーボトルコーヒー(以下、ブルーボトル)のトレーナーをされているということで、今日は中目黒カフェにあるトレーニングルームでお話をお伺いします。まずは藤岡さんのお仕事について教えていただけますか?
- 藤岡さん
- 僕はコーヒーの知識からコーヒーを淹れる際の技術、ブルーボトルが大事にしているポリシーまで、全般を教えるトレーニングを担当しています。
ブルーボトルではバリスタはもちろん、全スタッフが入社時に、コーヒー豆はどのように育てられて、どういった過程を経て、僕たちが知っているコーヒーになるのか、という“SEED TO CUP”の道のりを学びます。その上で、ブルーボトルが提供している全てのドリンクをベストなクオリティで飲んでもらい、その“こだわり”も初日に伝えています。そこから始まるトレーニングの全てに関わっていきます。
- 大井
- ブルーボトルに行くと、店舗にはバリスタがいて、さらにリードバリスタという人もいますね。トレーナーはバリスタにとってどんな存在なのでしょうか。
- 藤岡さん
- 各店舗にはバリスタがいて、そのリーダーがリードバリスタです。リードバリスタは店舗にいるバリスタのトレーニングを担当していています。リードバリスタの上長となるのが、僕が担当しているトレーナー。僕の上にはディレクターオブトレーニングのマイケル・フィリップスがいます。
- 大井
- マイケルさんはバリスタ世界チャンピオンですよね。藤岡さんは日本のブルーボトルのバリスタの中では、もっとも責任のある立場ということになりますね。
- 未経験のバリスタも採用し、“育てる”のがブルーボトル流
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- 大井
- 2016年にブルーボトルは新宿、六本木、中目黒、品川と新たに4店舗をオープンして全部で6店舗になりました。今は何人ぐらいのバリスタが働かれているのでしょうか?
- 藤岡さん
- 100人近くですね。
- 大井
- 店舗が増えるということは、そこで働くバリスタも必要になってきますよね。いま働いているバリスタの中には、未経験から働き始めた人もいると聞きましたが、ブルーボトルでバリスタのキャリアをスタートする人はどれくらいいるのでしょうか?
- 藤岡さん
- 半分くらいでしょうか。
- 大井
- そうなんですね! 他店の方と話していると「経験のあるバリスタを探している」という声を聞くのですが、ブルーボトルでは“未経験者を採用して育てる”というのが他店とは違うところですよね。バリスタ未経験の方をポジティブに見ている印象があるのですが、いかがですか?
- 藤岡さん
- はい。ブルーボトルには“バリスタを育成するための環境”が整っているので、未経験のバリスタでも、ブルーボトルでコーヒーを学びたいという意欲がある方であれば採用しています。
最初のトレーニングは学校のように一日8時間、まるまる一週間をかけて、座学と実技を教えていきます。技術というのは、感覚で覚えることもできるんですが、ブルーボトルではコーヒーの抽出理論、器具の説明など、全てにおいてまずは頭でしっかり理解してもらうプログラムになっています。情報量が多すぎてパンクしそうになる人もいるくらいですね。
座学や実技のトレーニングが終わると次は店舗で働き始めます。トレーニングが終わったからといってすぐに一人前になるわけではないですが、ブルーボトルの店舗ではかなり多くのコーヒーを淹れられる環境にあるので、バリスタの成長は早いんですよね。実際、ゼロからスタートしたバリスタでも半年くらいすれば、驚くくらい成長します。
- 大井
- “コーヒーを淹れる回数が多い環境”というのは、新人バリスタにとっては特にいいことですね。
- 藤岡さん
- そうですね。バリスタが成長していく過程を実際に見ているので、未経験のバリスタが多くても、彼らを成長させる自信があります。
- 大井
- バリスタたちのことを、すごく信頼されているんですね。
- 藤岡さん
- そうですね。バリスタを信じない限り、成長することは絶対ないと思います。
- ブルーボトルが大切にしている“ホスピタリティ”
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- 大井
- ちなみに“バリスタ経験がない”人を採用するときに、ブルーボトルとしては何を重視して採用しているのでしょうか?
- 藤岡さん
- 一番重視しているところは人柄にも表れる“ホスピタリティ”です。面接ではコーヒーが好きなことは最低限の条件ですけれども、接してみて受け答えの中にホスピタリティがあるかを見ています。他には、どのような考え方を持っているのか、それを聞いたうえでお店の中でどう活躍できるかを考えて採用しています。
- 大井
- ホスピタリティという言葉は、色々な捉え方があると思いますが、具体的にはどのような意味でしょうか?
- 藤岡さん
- 一言でいうと“おもてなし”だと思いますが、非常に難しいものですよね。まさに、面接でも「サービスとホスピタリティはどう違うと思いますか?」と聞くことがあります。あるバリスタが「サービスは業務範囲のことなのでロボットでもできるかもしれない。でもホスピタリティは業務以外にも関わることで人にしかできないこと」と言ったんですね。その答えはすごくいいなと思いましたね。
- 大井
- なるほど。ホスピタリティには、ぬくもりがある感じがしますね。
- 大井
- 藤岡さんがブルーボトルに入られた方にトレーニングをするにあったって、最初に伝えることは何ですか?
- 藤岡さん
- 「コーヒーとは何でしょうか?」という漠然とした質問を投げかけて、コーヒーがどんな農園でどのように栽培されて、どのような工程を経て、僕らが抽出するのか。その意味をしっかり教えます。
みんな焙煎されたコーヒー豆は知っていますけど、“コーヒーは農作物”というイメージはあまり持っていないと思うんですよね。コーヒーは農作物で、産地が違えば味が違うというということを伝えるために、「青森で育てられているリンゴと、山梨で育てられているリンゴは味が全然違うよね。コーヒーも同じなんだよ」と伝えるところから始めています。
- 大井
- すごく大事なところですよね。
- お客様にコーヒーの美味しさを伝えられるのが理想のバリスタ
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- 大井
- 他に、例えば理想のバリスタ像みたいなものを伝えたりしますか?
- 藤岡さん
- はい。“一杯のコーヒーを価値あるものにするのはバリスタ自身”ということを話しますね。バリスタは、SEED TO CUPの最後にいる人で、お客様に美味しく作ったコーヒーを渡すポジションです。コーヒーに関わってきた人達の想いや努力、すべてを担っているので、その美味しさをしっかりとお客様に伝えてほしいんですよね。
コーヒーの美味しい瞬間は本当に限られています。バリスタ次第で100点だったコーヒーが0点になる可能性もあるし、逆に120点になる可能性もある。その一杯を手渡すのがバリスタなので、美味しさきをきちんと伝えられることが理想的だと思います。
- 大井
- それはブルーボトルの理想のバリスタですか?それとも藤岡さんが考える理想像ですか?
- 藤岡さん
- 共通している部分だと思います。
- 大井
- 他に藤岡さんの考える理想のバリスタ像はありますか?
- 藤岡さん
- “自分自身で何を表現したいのか”が明確なバリスタじゃないでしょうか。ブルーボトルでよく話題に上がるのは“課題を決めよう”ということです。どこに向かってどのようにしたいのか、明確な目標や将来像を自分自身に持つことが大事だと思っています。それがないと成長することができない。目標や将来像を持つことで、目に見えてわかる形で自分の成長を実感していくことが大事なんじゃないかなと思います。
- この続きは、Vol.2の「バリスタトレーナーのやりがいと責任」(https://cafesnap.me/talk/161)で!次回の公開は12月23日(金)です。どうぞお楽しみに!
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