ブルーボトルコーヒーのこだわりとチャレンジ(Vol.4)
ブルーボトルコーヒーのトレーナー、藤岡響さんにお話をお伺いしているプレミアムコラム。Vol.4は、2016年12月から日米の店舗で使用・販売されることになった新ドリッパーについて。導入するにあたりブルーボトルコーヒーで実施されたトレーニングについても伺いました!
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- 初心者でも美味しくコーヒーを淹れられる、新ドリッパー
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- 大井
- 2016年の12月にブルーボトルコーヒー(以下、ブルーボトル)は新しいドリッパーを発売されましたよね。藤岡さんは使ってみてどのように感じましたか?
- 藤岡さん
- まず驚きました。新しいドリッパーは物理学を絡めてMIT(マサチューセッツ工科大学)を卒業した研究チームとブルーボトルが共同で開発していているのですが、実際に淹れてみると、その形状や溝が美味しいコーヒーを作るために作られたものだということを実感しました。ブルーボトルだからこそ作れたドリッパーだなと思いましたね。
- 大井
- 新しいドリッパーは、初心者の方でも美味しくコーヒーが淹れられますか?
- 藤岡さん
- そうですね。テクニックによるブレが少なくなるように設計されているので、誰でも美味しいコーヒーが淹れられると思います。
- 大井
- 自分で淹れたコーヒーというのは愛着もわいて、より美味しく感じますよね。
- 藤岡さん
- はい。“自分でコーヒーを淹れられる”ということは、コーヒーを楽しむうえで重要なことだと考えています。自分の好きな豆を買ってきて、自分の好きなタイミングでコーヒーを淹れることができるし、自分の好みにコーヒーを調節することもできます。新しいドリッパーを通して、コーヒーの楽しさがさらに広がっていったら嬉しいですね。
- ディレクターオブトレーニングのマイケルが全店舗で新ドリッパーのトレーニングを実施
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- 大井
- ブルーボトルでは新しいドリッパーを導入するにあたって、なにかトレーニングはあったのでしょうか?
- 藤岡さん
- ディレクターオブトレーニングのマイケル・フィリップスが全店舗のバリスタにレクチャーをしました。ドリッパー制作の過程で、穴やリブの形状が違う70種類くらいのサンプルをテストしたので、構造によってどんな違いが出たのかなどをデモンストレーションしながらレクチャーしました。
- 大井
- アメリカを拠点としているマイケルさんがわざわざ日本に来て教えられたのはなぜでしょうか?
- 藤岡さん
- 長年使ってきたドリッパーが変わるということは、バリスタにとって大きなチャレンジだと思うんですね。
実際、器具が変わったことでペーパーを折る必要がなくなったり、湯通しをしないなど変化がありました。だからこそ、バリスタは新しいドリッパーを理解し、納得した上で、お客様のためにコーヒーを淹れることが大事だと考えています。バリスタに理解を深めてもらうために、マイケルはレクチャーやバリスタ達とのセッションを約2時間、全店舗で行っていました。
- 大井
- そういった丁寧なやりとりがあるのはブルーボトルらしいですね。
- 大井
- 藤岡さんにとって、マイケルさんはどんな方ですか?
- 藤岡さん
- 本当に尊敬していますね。バリスタ世界チャンピオンなので、コーヒーについてはもちろんプロフェッショナルですが、それだけでなく、サービスやホスピタリティについても素晴らしくて、お店を作っていく上で大事なポイントを理解していると感じています。
時々、マイケルと一緒に店舗を見に行ったりするのですが、マイケルは「日本人だからこそ気にするだろうな」と自分自身が考えていた細かいポイントまでよく見ています。例えば、すごく細かいことですけど、飲み口を手で触れないように「取手を掴もう」と言うんですね。それも日本のバリスタに伝わりやすいように、英語じゃなくて、日本語で「取手、取手」と(笑)。
それから「ヘッズアップ、ヘッズアップ」ともよく言います。コーヒーを抽出している時も、しっかりお客様に意識を向けようという意味です。「美味しいコーヒーを作ることは絶対ですが、コーヒー店としてそれは最低限のこと。コーヒーを飲む人のことをしっかり考えないといけない」と言っていますね。
- チャレンジするのが、ブルーボトルのスタイル
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- 大井
- これまで伺ってきたお話から、ブルーボトルは他のコーヒー店にはない体制や取り組みをされていることを知りましたが、藤岡さんご自身はブルーボトルをどのように見ていますか?
- 藤岡さん
- “チャレンジしていること”がとにかく多いと思いますね。例えば、ブルーボトルではメニュー表を見ると、どのようなものかという説明をあえて表記してないんですね。その理由は、バリスタがきちんと説明できるからです。困っているお客様を見つけたら、バリスタが話しかける。それはお客様とのコミュニケーションに繋がりますし、ひとつチャレンジしていることです。
それから、豆の挽き売りをしない、というのもチャレンジのひとつです。私たちはできるだけ新鮮なコーヒーを飲んでいただきたいと考えていますので、なぜ飲む直前に豆を挽くほうが美味しく、より楽しんでいただけるのかを伝えることにチャレンジしています。
先ほどお話した新しいドリッパーもそうですね。コーヒーの抽出は一般的に時間がかかるし、美味しくコーヒーを淹れるにはテクニックも必要です。新しいドリッパーはセッティング時間と抽出時間を短縮して、短時間で美味しいコーヒーを作ることにチャレンジしています。ブルーボトルは常に、ただ簡単なほうに目を向けるのではなく、「美味しいコーヒー体験」を一番に考えてよりチャンレジングな方に進むので、そこが僕は面白いと思っています。
- この続きは、Vol.5の「藤岡さんが考える“理想のコーヒー”とは?」(https://cafesnap.me/talk/164)で!次回の公開は1月10(火)です。どうぞお楽しみに!
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