スペシャルティコーヒー・第一世代が知った感動と葛藤(Vol.3)
丸山珈琲の丸山健太郎さんにお話を伺っているプレミアムコラム、Vol.3では、2000年以降に日本でも広がっていったスペシャルティコーヒーについて。
いち早くスペシャルティコーヒーの魅力を発見した丸山さん。コーヒー業界の中では、様々な意見が飛び交う中、丸山さんがスペシャルティコーヒーを追求しつづけた理由とは?
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- スペシャルティコーヒーとの出会い
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- 大井
- 丸山珈琲のウェブサイトを拝見したときに、丸山さんが「最初は焙煎ですべてが決まると思っていた!」ということが書かれていました。(http://www.maruyamacoffee.com/about/quality/)それまで焙煎を追求していた丸山さんの中で、スペシャルティコーヒーの登場は何か変化をもたらしましたか?
- 丸山さん
- 私はコーヒーを始めたときから「ただ美味しいものを出したい」という気持ちで焙煎をしてきた、普通のコーヒー屋のお兄ちゃんでした。10年かけて焙煎を追求しながら、同時期にスペシャルティコーヒーという概念が広まり始めて、1990年代後半から私自身が少しずつコーヒー豆そのものの素材や品質に興味を持つようになっていきました。
- 大井
- 丸山さんが最初にスペシャルティコーヒーを知ったのはいつ頃でしたか?
- 丸山さん
- たしか98年か99年頃。インターネットで「スペシャルティコーヒーというものがあるらしい」と知ったのが始まりだと思います。アメリカでは80年代頃に言葉として生まれていたのですが、日本で知っている人はほとんどいませんでした。
もちろん、その当時は日本にスペシャルティコーヒーは入ってきていなかったので、最初に飲んだのは2000年頃。Cup of Excellenceで入賞した豆だったと思います。
- 大井
- 初めてスペシャルティコーヒーを飲んだ時はどう思われましたか?
- 丸山さん
- 「全然違うな!」と。それまでのコーヒーとは全く違って、“酸にまつわる味”を感じた初めての体験でした。以前、私の中では、酸と言えば酸っぱいだけでしたが、スペシャルティコーヒーには果実感があって、酸っぱいとは違う“酸味”があるということに驚きました。
その後、すぐにその生豆を分けてもらって自分でも焙煎したんですが、その時にはさらにビックリしましたね!それまでは、コーヒー豆から味を出そうとしたら、焙煎の技術を駆使してやっと少し味が出るぐらい。でも、スペシャルティコーヒーはすぐに味が出てくる。「これは焙煎で出る味ではなくて、素材の味なんだ」と分かった時に、素材の重要性を感じました。
- 突き抜けた“美味しさ”が、人の心を動かす
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- 大井
- 酸味の話でいうと、スペシャルティコーヒーが認知されるようになっていくときに、その酸味をネガティブに言う人もいたと聞いた事がありますがいかがでしたか?
- 丸山さん
- おそらく僕たちが日本で最初にスペシャルティコーヒーを始めた世代だったと思うんですね。今は、ある程度どのようなものか、形もできているので、若い人達の受け取り方には自由がありますが、当時は「コーヒーの基本はこうあるべきだ」みたいなものがかなりあって、一般のお客様というよりかは、コーヒー業界の中でアレルギーがあったように思います。
- 大井
- それに対してはどう思いましたか。
- 丸山さん
- 「なんでそういう風に反応するのかな」とは思いましたね。ただ、それはお客様には関係なかったので、そういう意味ではあんまり気にしていなかったです。
- 大井
- 丸山さんご自身が美味しいと思っていても、それを認める人が大多数ではなかった。理解してもらえない時期を、どのように乗り越えられたのでしょうか?その時に丸山さんが意識されていたことはありますか?
- 丸山さん
- 「すごくいいものを紹介すれば、必ず分かってもらえる」そう思っていました。なんでもそうだと思いますが、中途半端なものを紹介すると、「前の方がいいじゃん」って必ずなるので、“突き抜けたものを出すことが大事”だと考えていました。
例えば、「天ぷらが苦手なんですよ」という人がいたとしても、本当に美味しいものを食べると、「こんな天ぷらがあるんですね!」って食べられたりしますよね。本当に美味しければ、分かる人には分かると思うんです。
実は、丸山珈琲がかなり早い段階からCup of Excellenceで上位に入賞した豆を購入する理由はそこにあったりします。ちょっと違う、ちょっといいものじゃなくて、すごく違って、本当に美味しいものを出したい。それは心がけていました。
- コーヒーが嫌いだったからこそ、好きな人以上に見えるものがある
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- 丸山さん
- それから先ほど私は昔、「コーヒーが好きじゃなかった」という話をしましたが、それもある意味よかったと思っているんです。例えば有名なパン職人の中でももともとパンが嫌いだったという人がいますし、寿司屋だけど魚が嫌いという人の話も聞いたことがあります。「嫌いだからこそ、逆に好きな人には見えないものが見える」そういうことってあると思うんですよね。
- 大井
- なるほど……。もともとコーヒーが嫌いだったからこそ、苦手な人の固定概念を覆す“本当に美味しい味”を見つけることができる。それって面白いですね!
- この続きは、VOl.4の「丸山さんが世界規模でコーヒーを考える理由」で!次回は、3月14日(金)更新です。どうぞお楽しみに!
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