プレミアムコラム

バリスタが作り出す、新たなカフェ空間(Vol.3)

2000年以降のカフェやコーヒーを取り巻く環境についてグラウベルコーヒーの狩野さんと、編集・ライターの藤原さんにお話をお伺いしているプレミアムコラム。今回はコーヒーの作り手が変わるとともに変化してきた“カフェ空間”について。お客様と店主の関係性がフラットな店と、緊張感のある店、それぞれの魅力を語りました。

緊張感のある場から、会話が弾む楽しい空間へ
大井
CafeSnapを作っていると、カフェや喫茶店にはオーナーの人柄が色濃くでていて、“店=オーナ”だなと感じるのですが、バリスタが店に立つようになって、お店の雰囲気も変わっていったのでしょうか?
藤原さん
バリスタの人がいるカフェは、お店の人とお客さんの関係性がフラットになっいてるというか、気軽に会話ができるし、お客さん同士で繋がれる、そういう風に確実に変化しましたね。それこそスタンドで立って飲むようなお店もあるから、話しやすいとか、「せっかくだから話したいな」という感じに変わったんじゃないかなと思います。
狩野さん
私は昔から美味しいコーヒーを求めて飲みまわっていたんですけど、その中にはちゃんとした佇まいで行かないと怒られる、“厳しい店主”がいるところもありました。今もあるでしょうけど、当時はそういう場所が多くて、黙って店主と対峙し、音も立てずにただコーヒーの挽く音とコーヒーのお湯を注ぐ音を聞き、緊張しながら「一杯のコーヒーを味あわせて頂く」みたいな、そういうところがあったんです。例えば、今はもうなくなってしまったけれど神田の“らんぷや”さんみたいなところですね。
藤原さん
私も学生の頃に“カフェ・ド・ランブル”に行ったときに記憶に残る体験をしていて。店主の関口さんには綺麗な妹さんがいたんですが、その方がすごく怖かったんです(笑)初めて行ったとき、当時はコーヒーがそれほど好きではなかったので、必ずお砂糖を入れていたんですね。で、お砂糖をパッと手にとったら、机にお砂糖を置いているのに「ダメ!」と言われて。「あのね、コーヒーっていうのはお砂糖を入れるからお腹がおかしくなるのよ」と。「はい……」と、我慢して飲んでいたのを覚えています(笑)
緊張感の中で飲むコーヒーの魅力
大井
ひとつ質問なのですが……私だったらわざわざ緊張して飲まなくてはいけないコーヒー屋さんからは遠ざかってしまう気もするのですが、そうまでして行かれていたのはなぜなのでしょうか?
藤原さん
若い頃は「ちょっと背伸びをしたい」というか、そういう気分で緊張するカフェに行っていたんじゃないかなと思います。

それにピンと張り詰めた空間の中で、例えば大坊珈琲店の大坊さんがコーヒーを淹れてくださるその所作をじーっと見ている時は、五感がすごく研ぎ澄まされて、体中がコーヒーを飲むための準備をするんですよ。準備が整った状態で姿勢を正して頂くときの一杯は、コーヒーが体にババーッと沁みていって「もう、こんなにコーヒーの一滴が美味しいのか!」と感じるんですよね。

それはおしゃべりをしながら飲むのとは全然違う一杯。そこにいる瞬間は緊張で疲れても、逆にその緊張感で何かが解き放たれたり、何かがリセットされる、そういう瞬間でもあるのかなという気がしていますね。
大井
集中するほど、その一杯のコーヒーが体に沁みわたるっていうのは、私も体験したことがあります。狩野さんは緊張してまで、お店に行っていた理由はなんだと思いますか?
狩野さん
そういうお店がどんな風にどんな味のコーヒーを出すのか、果たして美味しいのか、美味しいならどう美味しいのか、ということに興味がありました。

都内にロースター仲間では評判のお店があって、エイジングしたイエメンのモカを本当に絶妙な焙煎度合いと絶妙な焙煎後の経過時間で出すんです。でも店主がドリップしている姿は見られないんです。壁があって、衝立が立っていて「鶴の恩返し」みたいにドリップしている姿は見えないんです。

私が行ったときも、緊張の中でコーヒーを一杯飲んで、すごく美味しかったので「実は私、焙煎やっているんです」って自己紹介をしたんですね。そうしたらカウンターから店主の方が出てきてすごく喜んでくださって。

店には「打合せの場合は入らないように」などと色々な張り紙が貼ってあるので、ちょっと怖い人なのかなと思っていたんですけど、すごくいい方で。「僕のとっておきを飲ませてあげよう」と名物のメニューを淹れてくださったり。

そういうお店は一見、敷居が高そうですけど、みなさんコーヒーについて話し出すとすごく熱量の高い方がばかりなので、生豆のことや焙煎のことを聞くのが好きでよく行っていました。
大井
ここのところコーヒー店もたくさんオープンしていますよね。最近のカフェやコーヒー店についてはどう見られていますか?
この続きは、Vol.4の「これから求められるコーヒー店とは」で!次回は、 6月21日(火)公開予定です。どうぞお楽しみに!
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