嗜好品としての日本茶を堪能できる、日本茶カフェ(Vol.1)
CafeSnap発案者の大井がお話をお伺いしているプレミアムコラム。第29回目にお迎えするのは表参道の日本茶カフェ、“茶茶の間”の和多田 喜さんです。
日本で暮らす私達にとって、馴染みの深い日本茶。それゆえに見逃しがちな、こだわりをもって作られた日本茶の魅力を2005年から伝え続けている和多田さんに、日本茶の楽しみ方と向き合い方を改めて教えていただきました。
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和多田 喜(わただ よし)さん
表参道 茶茶の間のオーナー。日本茶の香りと味わいに魅了され、2005年に日本茶インストラクターの資格を取得。自ら茶農家に出向き、高品質の茶葉を仕入れるとともに、カフェでは茶葉が持つ様々な味を引き出す淹れ方で日本茶の魅力を発信。昨今では日本茶とチョコレートのペアリングセットを発表するなど、日本茶の可能性を広げる活動にも積極的に取り組んでいる。
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- 馴染みがあるからこそ見逃している、日本茶の魅力と価値を発信
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- 大井
- 今日はよろしくお願いいたします。まずは“茶茶の間”について教えていただけますか。
- 和多田さん
- “茶茶の間”は一言でいうと、“嗜好品としての日本茶が楽しめるお店”です。日本はお茶に馴染みのある国ですから、ペットボトルのお茶や自宅で淹れるお茶、専門店のお茶など様々な種類のお茶がありますよね。どれが良い悪いということではなく、色々な楽しみ方がある中で、茶茶の間は“嗜好品としての日本茶の楽しみ方”を提案しています。
- 大井
- “茶茶の間”という名前はどのようにつけられたのでしょうか?
- 和多田さん
- みなさんの中には“茶の間”という言葉を“お茶を飲むスペース”と認識している方もいるかもしれませんが、もともと日本語で茶の間は“台所”。英語だと“ダイニングルーム”という意味で、家族がだんらんをする場所をさします。そこに“お茶を飲む場所”という意味は含まれていないので、“茶の間” の前に“茶”を付けることで、“人が集まってお茶が飲める場所”、英語でいうと“ティールーム”になるように“茶茶の間”という名前をつけました。
- 大井
- なるほど。茶茶の間ではどのようなお茶をだされていますか?
- 和多田さん
- 単一農園、単一品種で作られた、日本各地のシングルオリジンのお茶を数多く揃えています。中には50gで4200円する世界最高峰のお茶もご用意していて、なかなか飲める機会がない貴重なお茶も茶茶の間では楽しんでいただけます。
- 茶葉が開くにつれて変わっていく、日本茶の味わい
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- 大井
- 先日こちらに伺った際に、私はスイーツと日本茶のセットを注文したのですが、最初に茶葉そのものをいただけたり、その後にお茶を3回も淹れてくださることに驚きました。
- 和多田さん
- 当店ではスイーツとセットの場合は三煎、お茶だけでご注文いただくと、四煎~五煎で出しています。
三煎で淹れる場合、一煎目はお茶本来の味を楽しんでいただけるよう“お茶のエッセンス”を、二煎目はスイーツとのコンビネーションを楽しむためのお茶を出しています。お茶は様々な香り持っていて、必ずスイーツと重なる香りがあるので、一緒にあわせていただくとスイーツの味わいがより引き立ちます。三煎目は、純粋に飲んで楽しんで頂くためのお茶で、一、二煎目よりも量を多くお出ししています。
単品でお茶をご注文いただいた場合は、一煎目は氷水で淹れたお茶のエッセンスを、二煎目はお湯で出したお茶の渋味を、三煎目は冷水で淹れて香りを楽しんで頂けるようにワイングラスでお出しすることもあります。四煎目では再度お湯をさして、お湯で淹れた時の香りも楽しんでいただき、五煎目で喉の渇きを潤していただけるようにしています。
- 大井
- 1つの茶葉で5回淹れること自体驚きですが、それぞれ違う味になるというのも不思議ですね。
- 和多田さん
- 日本茶は“階層構造”になっていて、茶葉の表面、中心、芯の方とそれぞれ味わいが違います。これは製造方法に関連しているのですが、日本茶は茶葉を摘んだ後、蒸して、揉みながら乾燥させることで、茶葉に味わいをぎゅっと凝縮させています。お茶を淹れるときは、その凝縮された茶葉を逆に開かせて紐解いていくイメージです。氷水や冷水、お湯と段階的に注ぐことで、茶葉が持つそれぞれの味を引き出すことができます。
- 大井
- そうなんですね! 私は自宅でお茶を淹れるとき、いきなり熱湯を注いでいましたが、そうしないほうがよいのでしょうか?
- 和多田さん
- いえいえ、最初から熱湯を使うのがNGということではないんです。いきなりお湯を注ぐと、茶葉が早く開くのでお茶が持っている全ての味を引き出せます。その一方で、途中の階層構造は楽しみづらくなりますね。
- 大井
- なるほど。日本茶の楽しみ方はコーヒーとはまた違って面白いですね。
- コーヒーや紅茶にはない、日本茶だけが持つ“茶園の香り”
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- 大井
- 先ほどのお話しの中で、四煎目はワイングラスに入れる場合もあるとおっしゃっていましたが、それはなぜでしょうか?
- 和多田さん
- お茶の香りを楽しんでいただくためです。良質な日本茶は、生育した環境や茶園の香りをそのまま閉じ込めているので、茶葉が開いてくると、農園の風景が蘇ってきたかのように“茶園の香り”が立ち上がります。
日本茶は茶葉を摘んだ後、蒸して、揉んで、乾燥させているだけなので、摘みたての香りが茶葉にすごく残ります。お湯をさして茶葉を開かせていくと、三煎目くらいに摘みたての香りが蘇ってくる。それはコーヒーや紅茶など、他の嗜好品と日本茶が最も違う点だと私は思っています。
- いまが旬の新茶は“甘さ”が魅力
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- 大井
- 今まさに新茶の季節ですが、新茶はどのような魅力がありますか?
- 和多田さん
- 新茶はすごく甘いことが最大の魅力です。お茶は本来、熱帯性の植物なので、暑い地域では常に芽が出ていますが、日本は北限の産地で冬になると木が冬眠をします。
冬は零下まで気温が下がる日本の産地で、どのようにお茶が耐えているかというと、自ら水分を出して木を乾燥させます。水分を含んでいて凍ってしまえば人間のしもやけと同じで、傷になり、やけて枯れてしまう。だから、できるだけ水分を外に出して、零下になっても凍らない糖類を作り出して冬を過ごします。
そして春が来くると、冬場に作った糖類と取り戻した水分を使って芽を出すので新茶はとても甘くなるんです。
- 大井
- なるほど。日本がお茶の生産地として最北端ということは、その甘さも日本は際立っているということですね。
- 和多田さん
- はい、そうなりますね。
- この続きはVol.2の「シングルオリジンの日本茶にこだわる理由」(https://cafesnap.me/talk/200)で!次回の更新は6月6日(火)です!どうぞお楽しみに!
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