シングルオリジンの日本茶にこだわる理由(Vol.2)
表参道にある茶茶の間の日本茶ソムリエ、和多田さんにお話を伺っているプレミアムコラム、Vol.2は和多田さんが12年間以上こだわっているシングルオリジンの日本茶について。コーヒーや紅茶とは違った、日本茶にしかない繊細な魅力とは……?
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- シングルオリジン”という表現では伝わらなかった12年前
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- 大井
- 茶茶の間で販売されているお茶は「青い鳥」「流星」など素敵な名前が付いていますよね。それはどうしてでしょうか?
- 和多田さん
- 当店は2005年のオープンからずっとシングルオリジンのお茶を出しています。ただ当時と今とでは状況が全く違って、シングルオリジンと言っても誰も相手にしてくれなかったんです。その時はもちろん、シングルオリジンという言葉もなく、“単一農園、単一品種”と説明していたのですが、それも一般のお客様に理解していただくのは難しかったですね。そこで味をイメージしやすくするために、それぞれの茶葉から連想した名前を私がつけました。
- 大井
- たしかに味のイメージが名前になっている方が、素人からすると分かりやすいですね。
- 和多田さん
- はい、それが12年前です。最近だと逆にシングルオリジンと言ったほうが伝わりやすいので、便利になりましたね。やっと自分がやってきたことを「良かったな」と思いました(笑)
- お茶の特徴をダイレクトに楽しめるのがシングルオリジンの魅力
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- 大井
- 単一農園、単一品種のシングルオリジンにこだわられているのはなぜですか?
- 和多田さん
- シングルオリジンにすることで、甘味、渋み、香りなどその茶葉の特徴をダイレクトに楽しむ事ができるからです。中でも日本茶にとって“香り”は重要な要素。舌で感じるテイストでいえば、ブレンドのように混ぜたもののほうがバランスはよいですが、香りに着目するとシングルオリジンのほうが特徴はでやすいです。
- 大井
- お茶の特徴はどのような項目から判断しているのでしょうか?
- 和多田さん
- 甘味、渋味、旨味、そして香りですね。香りは飲んだ瞬間の香りや、飲んでいる最中の香り、飲み終わった後に口に残る香りなど3種類ほどあります。それから、渋味も単なる渋味だけでなく、苦く渋い味を意味する苦渋味(くじゅうみ)などもあります。
- 大井
- “苦味”もお茶の個性としてアリなのでしょうか?
- 和多田さん
- 個性としてはありますね。製法上、苦味が出るお茶もありますが、基本的に苦味は出ない方がよくて、良い味わいのものは“渋味”と表現します。
- 大井
- 渋味と苦味はどのように違いますか?
- 和多田さん
- これは私の感覚的なものになりますが、渋味は消えていき、不快ではないもの。それからいい渋味にはキレがありますね。渋いけれど渋味がサッと消えていきます。一方、口直しをしない限り舌の上に残る刺激が苦味と考えています。
- 大井
- なるほど。
- 舌で感じる味わいを左右する“香り”の重要性
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- 大井
- 旨味と甘味はいかがですか?
- 和多田さん
- 旨味は料理でいうところの出汁のような味。甘みは……一言でいうのが難しいですね。というのも、人間の脳の構造上、舌から得られる情報はごく一部で、味と香りは一体になって感じられるものだからです。
例えば甘味と言っても、香りにフルーティさを感じればフルーツの甘みになりますし、違うものならそれに付随する甘さを感じます。だから“香りに影響された複雑な甘味が出る”というのが、正しい表現かもしれません。
よく冗談で「鼻つまんで飲んでみてください。どのお茶も同じ味になりますから」と言うのですが、実はお茶が液体になったときに、抽出される成分は全体の0.3~0.5%ぐらい。それぐらい繊細な飲み物です。だからこそ、味を感じ取るために“香り”は重要な要素だと私は考えています。
- この続きはVol.3の「日本人のアイデンティティを呼び覚ます日本茶の力」(https://cafesnap.me/talk/201)で!次回の更新は6月13日(火)です!どうぞお楽しみに!
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