これから求められるコーヒー店とは(Vol.4)
グラウベルコーヒーの狩野さんと、編集・ライターの藤原さんにお話をお伺いしているプレミアムコラムVol.4。
コーヒーフェスティバルにもつながっていく昨今のコーヒーのブーム。2000年以降、コーヒーを取り巻く環境の変化を経て、いま求められているコーヒー店とは?
そして、日本のコーヒー文化を成熟させるひとつのきっかけとなった“インターネットの影響力”についても伺いました。
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- “多様性”がひとつのキーワード
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- 大井
- ここのところコーヒー店もたくさんオープンしていますよね。最近のカフェやコーヒー店についてはどう見られていますか?
- 狩野さん
- 実は、この7月に自分の店を始めることになったので、最近は続々とオープンしているコーヒー店ばかり行っているんです(笑)。でも、今日ここに来る前に初めて「さぼうる」に行ったんですね。さぼうるは神保町では有名な昔ながらの喫茶店で、藤原さんは学生時代に「さぼうるでさぼる」と言ったりしながら(笑)行かれていたことがあったそうなのですが、私は初めてだったんです。
驚いたんですけど若い人が多くて!ほんとにワンダーランドみたいな空間だったんです。藤原さんに話していたんですけど、渋谷にある「茶庭 羽當と同じような流れがあるね」って。茶庭 羽當というのは、ブルーボトルコーヒーのジェームス・フリーマンが好きな喫茶店のひとつですね。さぼうるの古い石造りや茶色いテーブル、サンドイッチとナポリタンは昔ながらの喫茶の世界観があって、すごくいいなとさっき再認識しました。
- 藤原さん
- それに今日改めて、さぼうるのメニューを見て「久しぶりにこういうメニューを見たな」と思ったんです。コーヒー、アメリカン、カフェオーレみたいな感じのメニューです。私達が最近行っているのはブラジルの、どこどこ農園の、どんな味がするコーヒーと書かれているところにしか行ってなかったので、「そうそう、こうだった」と思い出しました。そう考えると、今カフェのメニューはだいぶ変わりましたよね。と同時に、「そうか、スペシャルティコーヒーのある店だけが、カフェや喫茶店というわけではないんだな」と思いました。
全てにおいてそうなんですけど、今はファッションでも何でも“多様化”してると思うんですよ。昔、私がファッション誌の編集をやっていた頃は、トレンドがミニスカートだったら、みーんなミニスカートだったんです。ロングを履いていたら流行遅れ、そう思われる時代でした。でも今はものすごく多様化している。もちろんトレンドの流れみたいなものもありますけれど、ミニの人がいればロングな人もいるし、エスニックの人もいますよね。
- 大井
- 私は、以前CafeSnapのコラムでブルーボトルコーヒーのジェームス・フリーマンさんにインタビューをさせて頂いたことがあるんですけれども、その時にジェームズさんが今アメリカでコーヒータウンとして注目されているポートランドと東京が似ているというお話をされていたんですね。「どんなところが似てるんですか?」と聞いたらら「多様性」と答えられたんです。東京には深煎りのお店もあるしエスプレッソのお店もハンドドリップのお店も浅煎りのお店も、本当に色々なお店があって、それを街にいる人が受け入れているし、シーンや気分によって使い分けている。東京は選ぶ選択肢がたくさんあるというところが素晴らしいと話されていました。
- 藤原さん
- 本当にそうですよね。多様性があるということは文化が成熟してきているということ。つまり「これはこうですよ」とマスコミやメディアが1つに決めて、みんながそれに乗っかるのではなくて、ちゃんと個人が自分で判断できる。だからこそ多様性があるわけで。消費者の中に、その日の気分で使い分けていくっていうだけの何か判断軸ができてきたってことですよね。
- インターネットがコーヒー業界に与えた変化
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- 大井
- コーヒーが少しずつ成熟してきたことの理由のひとつに、「コーヒーの質が変わってきた」というのも関係していると思うのですが。
- 狩野さん
- コーヒー豆は個人で仕入れるのは難しい作物なので、昔はみんな商社やコーヒー専門店のグループから買っていたんですね。私が焙煎を始めた2002年頃というのはちょうど丸山珈琲をやってらっしゃる丸山さんのグループができたり、堀口珈琲やカフェ・バッハの田口さんのグループもありました。でもグループ外の人たちには、なかなかいい豆が手に入らなかったんです。
それが今では、インターネットでもいい豆が買えるようになったり、カップ・オブ・エクセレンスという国際品評会で落札した豆も、お店をやっているという条件が必要な場合もありますが、一般の人も買えるようになってきたんです。時代の変化とともに、いい生豆が手に入りやすくなってきたということですね。
さらに豆は、仕入れる側が生産者の人たちと直接会えるチャンスが増えてきました。私も今年の1月末から商社の方がアテンドをしてくださって、10人くらいの焙煎士たちとコスタリカに初めて買付けにいってきたんですけど、実際に農園を作っている生産者から話を聞いたりコミュニケーションをとることができました。
- 大井
- インターネットの普及で変わってきたこともかなりありそうですね。
- 狩野さん
- 今までは、コーヒーを作る人と生産者は距離が遠かったんですね。2009年にメキシコに行ったときは、連絡手段はメールくらいしかなかったですけど、今はその人たちもFacebookページを作っていて、すぐにメッセージを送れるし、「今年のコーヒーの花が咲きました」とか「こんな感じにコーヒーチェリーが熟しています」とか。みんなが情報をシェアしているので、生産者の人たちとの距離がすごく近くなってきたという感じがします。
- 大井
- コーヒーフェスティバルが増え始めたのは去年からだと思うんですが、それまでにフェスティバルをやろうという流れはなかったんでしょうか?
- この続きは、Vol.5の「コーヒーフェスティバルの先駆けと今」で!次回は、 6月24日(金)公開予定です。どうぞお楽しみに!
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