私立珈琲小学校のはじまりを支えた仲間達(Vol.3)
CafeSnapのプレミアムコラム、Vol.3のテーマは「私立珈琲小学校のはじまりを支えた仲間達」。
小学校の先生を退職された吉田さんがどのようにコーヒーの世界に入り、お店を作りあげていったのか……。そこには、コーヒーの街として知られている“アメリカ・ポートランド”で体験したこと、そして今や日本で第二のコーヒータウンとして話題になっている池尻大橋の人々の助けがありました。
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- 私立珈琲小学校につながる大事な出会い
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- 大井
- 21年の教員時代を経て、コーヒー屋をオープンされたのが2015年の春ですね。どのようにコーヒーの道に入られたのですか?
- 吉田さん
- ずっと教員をしていたので、カフェや飲食のノウハウは全然ありませんでした。本を読めば成功体験しかないし、インターネットを見ると失敗体験しかない。「どっちなんだ!」と思って、実際に自分でコーヒーを淹れてノウハウを勉強できるレコールバンタンで“速習コース”というすぐにお店を開きたい人たち向けのコースを受講しました。
でも飲食経験もない分、僕は「自分のお店をどのように作っていいか」が分からなくて悩んでいたんです。理論上“サードプレイス”と呼ばれるカフェは本で勉強したり、実際見にも行ったんですけど、“居心地のいい=洗練された”だと、だんだんホテルタイプになってきて。でも「僕の作りたいのはホテルのラウンジじゃないしな」と思っていました。
そんな時に出席簿上、苗字が近くて知り合ったのが、吉原君という友達で、彼は裏路地のカフェを攻める、カフェ巡りをする人だったんです。僕の悩みを聞いた吉原君は「じゃあ、僕がいいお店に連れて行きます」と学校終りに目黒川沿いあった“ドロール”というカフェ連れて行ってくれました。その店は全て自分たちでメニューを考案して、手作りをしているすごく素敵なカフェでした。
その後、そのまま目黒川を歩いて、いまプリンをお願いしている“マハカラ”へ。コンパクトなお店なんですけど、素晴らしい接客で、そこに毎週行くうちに重要なことが分かったんです。カフェにとって大事なことは、ハコやしつらえじゃなくて、“集いたくなる雰囲気の人がいる”ことだって。それは吉原君が教えてくれたんですよ。それ以降、コーヒーの勉強も接客の勉強も、人に会いに行ってダイレクトに学んで行こうと考えるようになりました。
そのうちに池尻大橋のものつくり学校内にあった自由大学のサイトで「クリエイティブ都市学」という講座を見つけて。今、西海岸のコーヒーの町として注目されているポートランドで何が起こっているかを事例に出しつつ、「クリエイティブとは何かを学んでいこう」という講座で、それがすごく面白かった。それに感化されたことと、そのタイミングでポートランドに行くサマーキャンプがあったので参加することにしました。
- 大井
- どんなことが印象に残っていますか?
- 吉田さん
- 小さな街で、自分の店の競合店ももちろんあるんですけど、蹴落とすようなスタンスのお店がなかったんです。例えば、僕たちはオックスというステーキ屋さんに行ったんですが長蛇の列で。予約もしていなかったので2時間かかるというときに、店の人が「あそこのお店のこのメニューも美味しいよ」と他のお店を薦めてくれたんです。「もしそのメニューでいいんだったらうちから予約入れるから」って。「いや、僕ら日本から来たのでここで食べたいんです」と言ったら「じゃあ、時間つぶすんだったらあそこのピザを1枚くらい食べて待っていたら?」と。そういう感じなんです。
- 大井
- なんて親切なお店なんでしょう。
- 池尻大橋は“助け合い”が行き交う街
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- 吉田さん
- 実は池尻大橋でも同じことがおきていて! 前にお店開いた池尻大橋の場所は、スタバの隣で50mも離れていなかったんですけど、オープンしたときに、スタバの石津さんとみなさんがスコーンを大量に差し入れしてくれました。今でも家にとってあるんですけど、そのとき紙に「一緒に池尻を盛り上げていきましょう。ようこそ池尻へ」ってコメントが書いてあって、泣けましたね……。そしてバリスタのみなさんがその日のうちに順番にコーヒーを飲みに来てくれました。
池尻大橋のスタバには当時すごく美味しいエスプレッソを落とす、鏑木くんというバリスタがいたんですけど、彼は毎日来てくれて「先生、これはフレーバーが弱い」と淹れ方のアドバイスもくれました。
Bubbles Chill Coffeeの森君も、The WORKERSの神長君もよく来てくれて。神長君は今回もそうなんですけど、僕が使っているエスプレッソのバスケットが合ってなかったのを見つけて、「これ使ってないから使ってください」と店から取って来てくれたんですよ。
- 大井
- すごい助け合いですね。
- 吉田さん
- 池尻大橋は最高ですよ。そして、コーヒー屋はそういう人ばっかりなんですよね。例えば、ONIBUSの坂尾君も、PADDLERSの松島君も僕が困っていると、コーヒーの作り方でも何でも全部教えてくれるんです。普通のお店だったらそういうわけにはいかないですよね。
- 大井
- そうですよね。さっきいらっしゃっていた方も、ご自身のお店をオープンしたときに吉田さんにすごく助けてもらったっておっしゃっていましたね。吉田さんのこと「この世に現れた聖人だ、こんなにも優しい人に出会ったことがない」って!
- 吉田さん
- いえいえ!それは全部、自分がしてもらったことなんです。僕が最初にお店に立った時に、困ったことが当然いくつも発生したんですよね。その経験があったので、コーヒー店を立ち上げた彼に、自分がしてもらったことをしただけなんです。
「自分がしてもらったことは、人にもしてあげよう」って子ども達にも言ってきたことですし、生徒に言ったことは自分でもしなくちゃいけない。だから人がいいとかじゃなくて、僕が先に受けてきたことをしただけなんです。
- 大井
- 自分がしてもらった事をちゃんと人に返すのは、分かっていても簡単にはできないと思うんですよね。
- 吉田さん
- でも「してもらったから、返さなくてはいけない」という気持ちではなくて……、ただ誰かに「ありがとう」と言われることをやるって、気持ちがいいことですよね。「ほんとに助かった」って言ってくれることを自分ができたんだなって思うと「役に立ったんだな」って思って。
- 大井
- そうですね。それは嬉しいですね。では、「ありがとう」の言葉が吉田さん力の一部になっているんですね。
- 吉田さん
- そうですね。自分が持っていることや、やれることで誰かが喜んでくれるなら、やりたいと思っています。
- 大井
- 私は吉田さんにお会いする前から、吉田さんのお話をたくさんの方から聞いていました。「私立珈琲小学校っていうお店があってね、元小学校の先生がされていて、本当に素晴らしい人なんです」って。吉田さんはたくさんの方から慕われていたりファンも多いと思いますが、吉田さんが人と付き合う上で心がけていることはありますか?
- この続きは、Vol.4「吉田先生流、人との向き合い方」で!次回は8月23日(火)公開です。どうぞお楽しみに!
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