伝統と文化を育む、美しきイタリアンバール(Vol.1)
CafeSnap発案者の大井がお話をお伺いしているプレミアムコラム。第18回目にお迎えするのは、COFFEEHOUSE NISHIYAのオーナーバリスタ、西谷恭兵さんです。
サードウェーブとは一味違う魅力を持つイタリアンバールの世界。美しいドリンクとフォトジェニックな店内からその魅力を発信する西谷さんに、イタリアンバールのこと、エスプレッソのこと、バリスタとしての大事にしていることなどを伺いました。
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西谷恭兵さん
COFFEEHOUSE NISHIYA、オーナーバリスタ。パティシエ、コック、ギャルソンを経て出会ったバリスタに転身後、10年を機にイタリアンバールスタイルのカフェをオープン。洗練されたメニューと美しい所作に定評があり、東京を代表するフォトジェニックなカフェとしても人気を博している。
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- 大井
- 今日はよろしくお願いいたします。まずは、COFFEEHOUSE NISHIYAのことを教えていただけますか?
- 西谷さん
- COFFEEHOUSE NISHIYAは地域に根差すことに重きをおいた、イタリアンバールスタイルのカフェです。コーヒーはエスプレッソドリンクのみ。アルコールやソフトドリンクも用意しています。また、軽食はクロックムッシュやホットドッグなど、食べやすくて丁度いいサイズのものを揃えています。
- 大井
- プリンも人気ですよね。
- 西谷さん
- プリンはまさかここまでうちのアイコン的要素になるとは計算してなかったんですけど反応がいいですね。スイーツはシンプルで日常的なものを出したくて、今でこそカスタードプリンやプレミアムプリンと謳っていますが、始めたころは「普通のプリン」とメニューに書いていたほどです(笑)もともとは素朴で日常にある食べ物ですが「COFFEEHOUSE NISHIYAを介すことでオシャレになる」そんなスイーツを作りたいと思っていました。
- 大井
- 確かに、プリンは日常的な食べ物で、見た目もどこか懐かしいですよね。
- 西谷さん
- 僕が作っているのはあくまでもイタリアンバールですが、あえて屋号にイタリアンバールとは謳っていません。それを謳ってしまうと、店の敷居を上げたり、来店動機の機会を狭めてしまうと思ったからです。それにメニューも軽めのパスタやパニーニなどイタリアのものを並べなきゃいけないですよね。
僕が大事にしているのは“総合的なバランス”。食の専門家には「イタリアンバールとしては少し違うのでは」と言われるかもしれないですけれど、僕はそれを十分理解した上でこのスタイルを貫いています。実際、いらっしゃるお客さんがこの空間を「イギリスのパブ」や「フランスのカフェみたい」と様々な国の店に例えてくれて、それは僕の狙いでもありました。
- 大井
- イタリアンバールをベースにしながらも、お客様が好きなように捉えてもらえる余白を残して、あえて店のイメージを固定しないようにしているんですね。
- 地域に根差し、街に機能する、イタリアンバール
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- 大井
- 店内の空間についてはいかがですか?イタリアンバールの特徴としては、背の高いこのカウンターでしょうか?
- 西谷さん
- そうですね。イタリアンバールの定義は、表面的なところだと、まず立飲みのカウンターがあります。これを“バンコ”とイタリア語でいうんですけど、バンコには立飲み価格もあったりしてテーブルに座るよりも安いんです。
それから、イタリアに行くとバールには必ず業態の名前が付いています。例えば、「カフェテリア バール ニシヤ」、「タバッキ バール オオイ」など。イタリアでは、バールは東京のコンビニエンスストア以上に数があるんですが、それでもみんなの経営が成り立っています。それは、それぞれが違う商品を扱っているからです。
僕の中でイタリアンバールの定義は、“地域に根ざし、街に機能すること”。COFFEEHOUSE NISHIYAもカフェとしてこの街で機能していくことでイタリアンバールに近づけるのかなと思っています。
- 大井
- “街に機能する”というのは具体的にどういう意味でしょうか?
- 西谷さん
- 僕が店を作る時、目の前の八幡通りは飲食店がめっちゃめちゃあるんですけど、どこかの店が出しているメニューをやりたくなかったんですね。単純に同じ商品でお客さんを取り合いたくないと思いました。大事なのは街の中で店同士が“共存共栄”し“切磋琢磨”できること。バールはそうやって街に機能していくんです。
- 大井
- “共存共栄”を実現するのは簡単ではないと思うんですが、西谷さんがそう考えるようになったきっかけはありますか?
- 西谷さん
- 私は両親が埼玉の北浦和でスナックをやっていて、今年で37年。今も現役で、街を歩けばみんながうちの両親に声をかけるんですよ。「困ったらマスターとママに相談しよう」って、お客さんもマスターとママを頼るし、同業者もマスターとママを頼る。それを子供の頃から見ていて「すごい人だな」と思っていたんです。
だから自分も商売を始める時は、うちの店があることによって、他の飲食店さんや地域でお仕事している人に機能的に使ってもらえたらなと思っていました。“共存共栄”と言葉にすると硬くなるかもしれないけど、そういう意識は自然と昔からあったんでしょうね。
- 大井
- 同業者の方から頼ってもらえるっていうのは、共存共栄ができてないと成り立たないですよね。
- 西谷さん
- そうですね、“共存共栄”があると助け合いが生まれるのと、お客さんをお互い紹介できるんですよね。例えばこのエリアにはレストランも多いので、「今度NISHIYAさんで一杯お酒を飲んでからうち来られたらどうですか」と、すごくスマートにご紹介してくださったり。
イタリアはまさにそういう文化のある国です。1つのお店で食前酒、食後酒をすませない。例えば18時からディナーだとすると、17時にバールで待ち合わせをしてそこで一杯アペリティーヴォ(食前酒)をして、それからレストランに行く。食事をして、ジェラテリアに行ってそこで甘いもの食べて。ディジェスティーヴォ(食後酒)を飲んで、帰ったりするんです。
- 大井
- そうなんですね!
- 西谷さん
- 外食に対して意識が高いというか、お店をまたぎながら、すごく楽しんでいるんですよ。
- 大井
- 17時に集合して、終わるのは何時くらいなんですか?
- 西谷さん
- 夜の12時とか。ず~っとしゃべってますよ。(笑)
- 大井
- すごいですね!食事もおしゃべりも大好きなんですね(笑)
そんな食文化の中でイタリアの方はエスプレッソを一日にどれくらい飲むんですか?
- この続きは、Vol.2「バールに欠かせない“魅力的なバリスタ”の存在」で!次回は9月6日(火)公開です。どうぞお楽しみに!
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