西谷さんに学ぶ、エスプレッソの飲み方(Vol.3)
以前、西谷さんが働いていたイタリアンバールでは、ほぼ全ての人が頼んでいたというエスプレッソ。ですが、「サードウェーブのブーム以降、エスプレッソを注文されることが減ってきた」と感じているそう。
今回は、改めて知りたい“エスプレッソの飲み方”を教えていただきました。
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- 注文が少なくなってきたエスプレッソ
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- 大井
- 最近、「サードウェーブやハンドドリップの流行とともに、エスプレッソを注文するお客さんが減ってきたように思う」とおっしゃっていましたよね。実際、お店に来られる人でエスプレッソを飲む方は減っているのでしょうか?
- 西谷さん
- エスプレッソを注文する人は、一日一人、二人くらいですかね。僕がLo SPAZIO(ロ・スパッツィオ)でバリスタ始めた頃、注文はエスプレッソばかりでした。
- 大井
- どんな人がエスプレッソを頼まれていたんですか?
- 西谷さん
- Lo SPAZIOがその頃には珍しいイタリアンバールだったこともあるかと思いますが、お客さんは全員、最初か最後にエスプレッソを頼んでいて「エスプレッソは絶対に飲む」、そういう存在でした。
- 大井
- 正直、私もエスプレッソだけを頼んだことはないんですよね……。ドリップコーヒーと比べると飲み方がわからないです。
- 西谷さん
- いやいやいや、カップを傾けたら飲めるじゃないですか(笑)。
- 大井
- コーヒーはある程度量があるし、ミルクをいれたり砂糖をいれたり飲み方を知っているんですが、エスプレッソのように濃厚で少量の飲みものをどういう風に飲んでいいのか、よくわからないです……。なので、今回はぜひ飲み方を教えてください!
- 西谷さん
- そりゃそうだよね。でもほんとに何にも難しくないですよ。
- エスプレッソの基本の飲み方
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- 西谷さん
- では、まずこれは普通に淹れたエスプレッソです。こういうふうに砂糖入れます。砂糖の量は“ウノメッツォ”。ウノは一杯、メッツォは半分という意味で、1.5杯入れるんですよ。それで普通に溶かして飲むだけです。
この砂糖を溶かしている時間が最高に楽しいんですよね!ディズニーランドで言うとアトラクションに乗るまでの恋人との時間。最高じゃないですか!
- 大井
- 混ぜながら、ここで話をするんですね。
- 西谷さん
- このたわいもない話が一番楽しいんですよ。イタリア人はずっと話しているんで「早く飲めよ」って思う時もあるんですけどね(笑)。
- 大井
- 少しだけ溶かして飲むのもありなんですか?
- 西谷さん
- そうそう。全部溶かすのはスタンダードな飲み方です。イタリア人は、混ぜた後にカップの淵にティースプーンで円を書くんですね。半周の人もいるし、一周する人もいます。これをすることでカップを傾けたときに香りを感じやすくなります。混ぜたティースプーンはソーサーに置く人もいるし、バリスタの仕事増やすからとティースプーンを入れたままにする人もいます。
- 大井
- これで飲めばいいですか? うん、美味しい。全然苦くないですね。
- 西谷さん
- よくいう「チョコレートのような」ですよね。
- 大井
- はい、そうですね。美味しいです。イタリアでいう一般的なエスプレッソは、チョコレートやナッツのような味わいがするものになるのですか?
- 西谷さん
- はい、そうですね。これはスタンダードなエスプレッソで、イタリア語ではいわゆる「カフェ」になります。
- 大井
- ちなみに、砂糖1.5杯って、結構入れますよね。これを朝に飲むというのは、“朝にチョコレート食べる”みたいなイメージに近いんでしょうか?
- 西谷さん
- そう。そんな感じです。
- 大井
- コーヒーとスイーツのセットみたいな飲み物なんですね。
- エスプレッソの多彩な楽しみ方
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- 西谷さん
- 次がカフェリストレット。リストレットっていうのは短いという意味で要は「濃厚な」エスプレッソです。これを混ぜて、イタリアはバンコに牛乳のミルクポットは置いてあるんですよ。それを自分でちょっと足して……。一口飲んでみてください。
- 大井
- 全然違いますね、マイルド。
- 西谷さん
- 最初のエスプレッソがチョコレートに対して、こっちはキャラメルっぽくなる。
- 大井
- そうですね。全然、味が変わりますね。たしかにキャラメルっぽい。
- 西谷さん
- そうなんです。
- 大井
- 普通のエスプレッソとリストレット、それぞれを選ぶタイミングとかはあるんですか。
- 西谷さん
- 気分、気分!エスプレッソしか飲まない人もいるし、リストレットしか飲まない人もいます。
- 西谷さん
- 次はカフェルンゴ。ルンゴはあえてネガティブな要素である出がらしを入れるんです。今のサードウェーブは、ネガティブの要素を全部排除することが良しとされていますが、イタリアはそんなことない。出がらしにはカフェインが多く入っていて、量も多くなります。カフェインは苦みなので、単純に苦いと思いますよ。
- 大井
- そうですね、さっきより苦い。
- 西谷さん
- これがカフェインです。例えばですけど、朝、目が覚めない、仕事をしていてパッとしない時は、カフェインが強いルンゴのほうが脳を起こしてくれます。だから、バールでバリスタがお客さんの顔色を見て、ぼーっとしていたり、眠たそうだったらこちらを提案するんです。
さらに残ったところにブランデー入れて……一口。
- 大井
- うわ、すごい。コーヒーとブランデーが合わさってすごく美味しいですね。
- 西谷さん
- 飲み終わったところに、お砂糖入れる人もいます。
- 大井
- どんなエスプレッソでも、飲み終わったところにお砂糖を入れていいんですか?
- 西谷さん
- そう。これを食べたりするの。
- 大井
- へぇー!
- 西谷さん
- イタリアではこういうのを、子供の頃にお母さんやお父さんから教えてもらうんですよ。子どもはコーヒーが飲めないからミルク入れたり、お砂糖入れたり、お父さんがエスプレッソ飲んだら最後に砂糖入れてもらってそれをもらうとか。
- 大井
- 美味しい(笑)。
- エスプレッソにタブーなし、自由に楽しんで
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- 西谷さん
- 今のサードウェーブはコーヒーのフレーバーを味覚表現するじゃないですか。「なんとかのようで美味しい」って。僕は「違う、違う、そういうことじゃないんだよ」と思っていて。僕が伝えたいのはこの楽しみ方です。とにかくバールに行って、バリスタにエスプレッソを頼んで砂糖をかき混ぜながら「今日はどうだったの?」って話をする。
- 大井
- たわいもなく話をするその時間が一番楽しいですよね。
- 西谷さん
- そう。エスプレッソの飲み方は、さらに色々あるんですけど、決まった飲み方は何にもなくて、砂糖入れるならしっかり溶かしてもいいし溶かさなくてもいいし、もちろん砂糖をいれなくてもいい。ほんとに自由なんですよ。
- 大井
- 知らない分、これをやったらタブーなんじゃないかと、気になってしまうんですけど。
- 西谷さん
- 全くない。
- 大井
- ないんですか(笑)。
- 西谷さん
- それこそ、最後飲み終わったカップに水を入れるイタリア人もいるしね。ほんとにルールはないんですよ。お店でも知りたいことがあればちゃんと教えるんでぜひ聞いてほしいです。
- 大井
- そうなんですね。わかりました。ありがとうございます。
先ほど、サードウェーブの話が少しでましたが、西谷さんはサードウェーブについてはどのように見ていらっしゃいますか。
- この続きは、Vol.4「西谷流、コーヒーとの向き合い方」で!次回は9月13日(火)公開です。どうぞお楽しみに!
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