西谷流、コーヒーとの向き合い方(Vol.4)
COFFEEHOUSE NISHIYAの西谷さんにイタリアの伝統や文化を含めてお話を伺っているプレミアムコラム。今回はいよいよコーヒーについて。
Vol.4では昨今のコーヒーブームや、西谷さんがどのようにコーヒーと向き合っているのかをお聞きしました。イタリアンバールのバリスタならではの姿勢、考え方とは?
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- 味だけでなく、バールでの会話とともに楽しんで
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- 大井
- 先ほど、サードウェーブの話が少しでましたが、西谷さんはサードウェーブについてはどのように見ていらっしゃいますか。
- 西谷さん
- サードウェーブというくくりは別として、お店が増えることは嬉しいことです。自分が行けるお店が増えるわけだし、お店が増えるということは、単純にお客さんが増えるということなので、それはすごく嬉しいことですね。
うちは雑誌などで取材を受けると「サードウェーブ対トラディッショナル」となぜか対抗馬みたいに扱われるんですけど(笑)。サードウェーブに対して否定的な思いは何一つありません。
それこそ最近は「カフェモカってなんですか」と聞かれることもあるんですよ。サードウェーブからコーヒーを知った人にとっては、チョコレートなどを入れるアレンジドリンクが新しい。豆の個性を最大限に引き出したコーヒーもいいですけど、コーヒーはそれだけじゃない。むしろ“美味しい商品”をどう作れるかが僕は大事だと考えています。
僕も以前は、カッピングをやっていた時期があったんですよ。でもある時「これは自分はやってはいけない分野だな」と。イタリアンバールのバリスタとしてここまで踏み入れる必要はないと思ったんです。というのも……
- 西谷さん
- 単純にコーヒーを脳で楽しむようになったんですよね。それこそプライベートで楽しんでいたコーヒー屋さんのコーヒーも、脳で評価するようになってしまって「いかんいかんいかん!」と。それはすごくストレスだったし、それから一切やらないようになりました。
今はコーヒーファンの方も一般の方もすごくコーヒーに対して意識が高くなってきているので、知りたいだろうし、それを自分の言葉で表現したいという気持ちもあると思うんですけど「別に言わなくてもいいんじゃないの」と僕は思っています。
- 大井
- もっとリラックスしていいというか、コーヒーの味にとらわれるのではなくて、バールでの会話や体験を楽しんでという感じですよね。
- 西谷さん
- それこそイタリアのバールの話になりますけど、コーヒーもパニーニもカクテルも、それについて感想を言う客なんか一人もいないですよ。それこそ恋人と話して「これ美味しくない?」ということは絶対ないです(笑)。
- 大井
- そうなんですね!
- 大事なのはひとりひとりの“リズム”に寄り添うこと
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- 大井
- 西谷さんがCOFFEEHOUSE NISHIYAを経営されている中で特に大事にしていることはなんですか。
- 西谷さん
- スタッフとよく話しているのは、“リズム”。そして、それを叶えるための“スピード”です。すごく語弊があると思うんですけど、うちは商品のクオリティを下げてでもスピードを優先します。普通は逆なんですよね。時間をかけてでもいいものを出すべきだと。でもこの環境において重要なのは“リズム”と“スピード”なんです。
それはなぜかというと、例えば、平日のランチタイムには、近隣の会社員の方が来るんですけど、ランチの時間は30分や1時間と限られているので、僕はその人のテンポやリズムに合わせてドリンクやフードを出してあげたいんですよね。
いまコンビニのコーヒーがこれだけ普及していて、その理由を考えると、みんなは価格だというんですけど、僕は“リズムがあっている”からだと思います。お弁当を買ったその流れでコーヒーが買える。自分のリズムで買える方を人は優先する。だからうちの店では、お客さんのリズムを見て、スピードを優先しています。と言っても品質は落とさないですけどね。
- 大井
- それぞれのお客さんのリズムに寄り添っていくということですよね。そのリズムってどうやって感知しているんですか?
- 西谷さん
- 物理的にいうと、お客さんをすごく見ています。初めてのお客さんなのか、常連さんなのか近隣の方なのか。その人が来た時間帯や滞在時間、頼み方をよく見るようにしています。
この辺りは完全にオフィス街なので、財布しか持ってない人は周辺に勤めている方。その場合は、その人のリズムに合うようにスピーディーに提供していきます。
逆にこの店や、西谷を目当てに来ているお客さんにはあえて時間をとります。例えばお客さんがカプチーノを頼んだ時、初めてきた人は緊張しているので、そのままお出しすると、あっという間に出てきて飲むことになる。その場合は、少しその人の緊張を解いてあげる時間をこっちは設けるんです。もしその人がカウンターでスタンディングだったら、少しお話してからコーヒーを作るようにしています。
- 大井
- なるほど。カフェ好きの方々から、西谷さんといえば、「接客やサービスが素晴らしい」と、聞きますが、お客さんをよく見られて、それぞれのリズムに合わせて提供しているからなんですね。
- 西谷さん
- なぜか「サービスといったら西谷さん」とか言ってもらえるけど、紐解いていくと実は僕はなにもしてないんですよ。
- 大井
- というのは……どういう意味ですか?
- この続きは、Vol.5「西谷さんが考える“良質なサービス”とは」で!次回は9月16日(金)公開です。どうぞお楽しみに!
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