人と人を繋ぎ、出会いを作る、コーヒースタンド(Vol.1)
CafeSnap発案者の大井がお話をお伺いしているプレミアムコラム。第19回目にお迎えするのは、ONIBUS COFFEEオーナーの坂尾篤史さんです。
2016年1月にオープンした2号店目となる、“ONIBUS COFFEE中目黒”で行った今回の対談。コーヒーだけでなく、空間デザインやテラスの植物、イベント企画に至るまで、その細部に、坂尾さんの “コーヒーを通して全ての人を幸せにしたい”という想いが込められていることを感じました。
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坂尾篤史さん
バックパッカーとして旅したオーストラリアでカフェ文化に触れ、コーヒーの世界へ。アジアを巡り、帰国した後、ポールバセットに入社する。バリスタとして2年半のキャリアを積み上げた2012年、奥沢にONIBUS COFFEEをオープン。現在、渋谷のABOUT LIFE COFFEE BREWERS、外苑前のバイシクルショップ内にあるRATIO &Cを含め4店舗を経営している。
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- “全ての人々のためになる”コーヒーを作る
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- 大井
- 今日はよろしくお願いいたします。まずは、ONIBUS COFFEE(オニバスコーヒー)についてお伺いします。名前の由来から教えていただけますか?
- 坂尾さん
- ONIBUS (オニバス)は ブラジルの“公共バス”のことです。ある日、深夜にテレビを見ていたらブラジルについての旅番組を放送していて、その中で知った言葉です。
「ブラジルでは長距離の移動手段はバスが多いので、バス停1つ1つに出会いと別れがあり、色々なことが起こる」というような内容でした。当時僕は、バックパッカーをして帰国したばっかりだったので、親近感が湧きましたし、旅の中で長距離バスにもよく乗っていたのですごく共感したんです。
それに、ONIBUSという言葉は、“全ての人々のために”という意味もあって、OMNIBUSの語源にもなっています。徐々に人に認知され、使われて、公用語になったそうです。自分たちのコーヒーも、「飲んでくれる全ての人のためになったらな」そして「ブラジルのバス停のように、出会いや別れを通して、人と人を繋ぐようなお店になったらいいな」という願いを込めてONIBUS COFFEEと名付けました。
- 大井
- 素敵な名前ですよね。ONIBUS COFFEEが最初に店舗を構えたのは奥沢で、こちらの中目黒店がオープンしたのは、2016年の1月ですよね。ここを建てられた時のコンセプトなどを教えていただけますか。
- 坂尾さん
- ONIBUSは奥沢の頃から何も変わっていなくて、「人と人が集まって、交わって、繋がれる場所」がコンセプトです。自分たちはお客さんとの繋がりの中で、お客様の生活を向上させる、そして自分たちの生活も向上させる。そうあるためにハイクオリティなコーヒーを常に提供することを大切にしています。
- 大井
- 「生活を向上させる」というのはどのような意味ですか?
- 坂尾さん
- 「人との出会いが人生で一番大切。出会いが僕らの人生を豊かにしてくれる」と思っています。だから、店をやっている自分たちも、人生で心から繋がれるような人たちと出会って、できるならお客さん同士もそういった出会いを通して繋がりを作ってもらえたらと思っています。
ビジネス的なことを言えば、僕らが成功することによって農家さんに還元して彼らの生活を向上させることができる。農家さんに還元できるということは、より美味しいコーヒーが作られるようになるので、僕たちのビジネスにも再び還元されて、最終的にお客さんに美味しいコーヒーが提供することができる。すべてのことに繋がっていきます。
- 大井
- そうですね。全ての人にとって、“よい還元のよいサイクル”が周り始めますね。
- 人生に大きな影響を与える“出会い”
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- 大井
- 坂尾さんが「出会いは人生を豊かにする」と考えるようになったのは、どんなことがきっかけだったのでしょうか?
- 坂尾さん
- やっぱりバックパッカーをしていた時の出会いでしょうか。バックパッカーをしていた時は、常に出会いと別れの連続なんですけど、自由な身でいる分、出会う人によって自分が進む道がかなり左右されていくんですね。「誰と出会ってどんな話をするか、それは自分の人生に大きく影響するな」と思いました。
- 大井
- なるほど。だからこそ、たくさんの人に会える場所を構えて、人生を通じて繋がれる人との出会いを作っていきたいということですね。そういった考えでの一環かもしれないですが、最近はこちらでONIBUS DEPARTMENT(オニバスデパートメント)というマルシェもされていますよね?
- 坂尾さん
- はい。マルシェや市場には本当に色々な人が来るじゃないですか。僕はコーヒー業界の人よりも他業種の友達の方が多いので、仲のいい友達でいいプロダクトを扱っている人たちを集めてマルシェを開いています。そうすると、その友人のお客さんも来てくれる。自分たちのような作り手もお客さん同士も、今まで知らなかったプロダクトや人にたくさん出会えて、それっていいなと思ったんです。
- 大井
- 確かに、たくさんの出会いがありそうですね。実際、やってみてどうでしたか。
- 坂尾さん
- すごく楽しかったです。また「10月にやれたらいいよね」と話しているところです。
- 農園の人と同じ気持ちを、少しでも東京で
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- 大井
- ONIBUS COFFEE中目黒は、日本家屋をリノベーションと聞きましたが。
- 坂尾さん
- そうですね。元々は長屋だったんですけど、僕らが来た時は一軒前に飲食店が入っていたのでけっこう直されていて、逆に少し日本っぽい趣になるよう戻してあげた感じですね。
- 大井
- 外には緑も多いですよね。Instagramでは坂尾さんが植物の株分けをしている写真も拝見したのですが、緑に手をかけられているのはどうしてですか?
- 坂尾さん
- 単純に緑があった方が気持ちいいかなというのと、僕らは東京にいてコーヒーを淹れていると、農業に関ることは全くないんですよね。僕はスタッフに少しでも農業や植物を育てることを感じてもらえたらなと思っています。
だから外に置いているハーブウォーターのミントは僕たちで育てているものですし、その木はブドウ。これはブドウの蔦です。コーヒーかすや生ごみをコンポストして作った肥料を使って育てています。これからはレモンの新しい株が出荷されるので、それも予約していて今後植える予定です。
- 大井
- スタッフの方々に「植物を育てるということ少しでもを感じてほしい」とおっしゃいましたが、それはどうしてですか?普通のコーヒー屋さんは、産地のことは考えると思うのですが、植物、特にブドウ、レモンを自ら育てる人はあまりいないですよね。
- 坂尾さん
- コーヒーを生産することは農業だからです。日本にいると焙煎豆としてしか見られないですけど、「コーヒーは植物で食物なんだよ」っていうのを少しでも意識してほしい。東京にいると、サスティナビリティを全く感じられないですよね。
- 大井
- サスティナビリティというのは、“持続可能な”という意味ですよね。発展途上国や環境問題の勉強したときに聞いたことがある言葉です。コーヒーでいうところのサスティナビリティというのはどういう意味なのでしょうか?
- 坂尾さん
- 地球環境に配慮した農業を行い、安全に作られていること。それから労働者の働く環境が整っていて、作られた豆が正当な価格で取引されること。そういったことが“継続されている”状態のことです。
僕らはコーヒー農園に行った時、どんな肥料を使っているかを見るんですよね。パルプやもみ殻、生ごみコンポストもあります。自分たちが提供しているコーヒーは環境に配慮して安全に丁寧に作られている。それを常に意識するためにも、生ごみコンポストで作った肥料を使いながら自分達も植物を育てているんです。
- 大井
- コーヒーにおけるサスティナビリティの1つを、坂尾さんは東京で実施されているんですね。
- 坂尾さん
- そうですね。ほんとに少ししかできないんですけど。「やれることを少しだけでもやった方がいい」という思いでやってますね。
- この続きは、Vol.2「一杯のコーヒーに関わる人達を幸せに」で!次回は9月27日(火)公開です。どうぞお楽しみに!
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