一杯のコーヒーに関わる人達を幸せに(Vol.2)
ONIBUS COFFEEの坂尾篤史さんにお話をお伺いしているプレミアムコラム。Vol.2は坂尾さんが作るコーヒーについて。
世界中のコーヒーを飲み、その時々のトレンドも考慮しながら美味しいコーヒーを追求している坂尾さん。「農園でも東京でも“喜びが連鎖する関係”を築きたい」と語る坂尾さんが、世界中から豆を選ぶ際に重視していることなどもお聞きしました。
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- 変化しながら、美味しいコーヒーを追求
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- 大井
- 今日はブレンドのアメリカーノを頂いたんですけども、とてもジューシーで味わいも香りも美味しかったです。コーヒーは浅煎りで焙煎をされていますよね。坂尾さんがコーヒーを作る上で重視していることはありますか?
- 坂尾さん
- 味わいは豆によって結構変わるので、その時々で常にいいものを出すということを意識しています。
- 大井
- 豆によって焙煎具合も変えているのでしょうか?
- 坂尾さん
- もちろん、そうですね。それからトレンドもあります。焙煎度合いは浅い時もあれば、少しだけ深い時も。お客さんからすれば本当に些細な違いかもしれないですが、僕らにとってその違いはかなり大きくて。自分は色々な国のコーヒーを飲んでいるので、その時々で常に変化しながら、いいものを追いかけることを大切にしています。
- 昨今のコーヒートレンド
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- 大井
- 先ほど、“コーヒーのトレンド”という言葉が出ましたけど、今のトレンドはどのようなものですか?
- 坂尾さん
- 焙煎が前より少し深くなっていますね。“デベロップ”といって、豆の個性をもう少し引き出すようになっています。2、3年前は、北欧でもメルボルンでもとにかく浅さを打ち出していたのですが、最近はその時より少し火を煎れてコーヒーの個性を出す傾向にあると思います。
- 大井
- 浅い方が個性は出ると思っていたんですが……。
- 坂尾さん
- そうでもないですね。すごく狭い範囲の中の話になりますが。
- 大井
- そうなんですね。そういえば、夏休みにノルウェーの世界バリスタチャンピオンになったTim Wendelboe(ティム・ウェンデルボー)のお店に行ったのですが、焙煎が少し深くなったと聞きました。その店だけのことかと思っていましたが、全体的にそうなのでしょうか?
- 坂尾さん
- 全体的にその傾向になっていますね。
- 農園でも東京でも“喜びが連鎖する関係”を築きたい
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- 大井
- ONIBUS COFFEEで出されている豆は、世界中から買い付けていると思いますが、豆を選ぶ時に坂尾さんなりの基準はありますか?
- 坂尾さん
- 自分たちが行く農園に関しては「そこの農園と継続的なお付き合いができるか」を見るようにしています。それから、クオリティがいいのは大前提ですが、クオリティの基準値を超えていれば、あとはその農園が「今後、改善していく志があるのか」「僕らと同じ意識を持っているのか」「同じ方向を向いているのか」を見ています。
- 大井
- 農園によってその“意識”は違うものですか?
- 坂尾さん
- 全然違うと思いますね。
- 大井
- 農園の方と話をされる中で、どのようなところが一致すると、「この人たちは同じ方向を向いているな」と思われますか?
- 坂尾さん
- 例えば、グアテマラで僕たちが行った農園には小学校があります。収穫の期間だけ“ピッカーさん”という豆を収穫する人たちが来るんですけど、グアテマラではピッカーさんは低所得者なので基礎教育も受けられない人が多いんです。
僕が買っている農園は、「ピッカーさんたちの子供に教育を提供したい」と考えていて、収穫期間の4ヶ月だけ、農園に小学校を作って授業をしています。そうすることで毎年、同じピッカーさんが集まり、収穫の技術も上がっていく。さらに、その農園はノウハウも得るので、改善が持続的にできるようになっていきます。さらに、教育を受ける子供たちも将来は農家さんになるので、「なぜ美味しいコーヒーを作るのか」を理解するんですよね。
農園に学校ができることで、コーヒーの生産が安定して継続できる。つまりサスティナブルなものになっていく。僕らはその農園からコーヒーを買うことで、小学校に通う子供の支援ができたり、僕らが現地に行った時にはノートやえんぴつを届けることもできる。「自分の仕事が社会的に誰かのためになっている」と実感できるんですよね。
そんな風に、ただ一杯のコーヒーをお客さんに提供するだけじゃなくて、僕らのコーヒーが誰かのためになっていて、お客さんが買ったコーヒーも誰かのためになっている。そんな関係が築ける農園を選ぶようにしています。
- 大井
- 農園でも東京でも、誰かに喜んでもらえることが連鎖していきますね。
- 坂尾さん
- そうですね。いいエクスポーター(取引人)に「この豆ちょうだい」っていうのは簡単なんですけど、できるだけ農園と付き合っていきたいと思っています。継続的なお付き合いをすることは簡単なことではありませんが、10年後にはそういうことがもっとできるコーヒー屋さんになれていたらいいなと思います。
- 大井
- ちなみに目標やお手本にされている方はいらっしゃいますか?
- 坂尾さん
- Tim Wendelboe(ティム・ウェンデルボー)はやっぱりすごいなと思いますね。彼が運営しているノルディックアプローチという生豆輸入会社は、「ハイクオリティなコーヒーを提供しつつも、サスティナビリティを明確にして、農家さんの信頼関係を築きながらコーヒーを作る」ということをコンセプトにしています。モデルとしてはノルディックアプローチが一番近いかなと思います。
- この続きは、Vol.3「旅を通じて気付いた、人生のポリシー」で!次回は9月30日(金)公開です。どうぞお楽しみに!
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