コーヒーを通して伝えたい、日常の大切さ(Vol.4)
ONIBUS COFFEEの坂尾さんにお話を伺っているプレミアムコラム。Vol.4は坂尾さんが考える「コーヒーを通して伝えたい、日常の大切さ」について。
ONIBUS COFFEE、ABOUT LIFE COFFEE BREWERS、ratio&cと店舗数が増えていく中で、乗り越えてきた不安や苦労。坂尾さんがどのようにそれらを乗り越えてきたのか、そして今、4店舗を経営する上で常に大事にしている想いを伺いました。
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- 大井
- 奥沢のONIBUS COFFEEを立ち上げられたのは2012年ですよね。その時は、どのようなビジョンを持たれていましたか?
- 坂尾さん
- 僕は飲食未経験でポールバセットに入って2年半で独立しました。経営の勉強をしていたわけでもないし人生経験も少なかったので、当時はミッションやビジョンを大きく持っていなかったと思います。
ただ「人よりも美味しいコーヒーを作りたい、そして今の自分は作れる」という自信はその頃からありました。誰よりも美味しいコーヒーを作って、飲んでもらって、飲んでくれた人が何か価値を感じてくれたら、自分の場所で人が出会ってくれたら、そして自分も人と出会えたらいいなと。ほんと単純なものでしたね。
- 不安だからこそ、立ち止まらずに動く
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- 大井
- 経営の知識がなかった……というのも驚きだったのですが。大変じゃなかったですか?
- 坂尾さん
- 僕らみたいな個人店だったら全然、大丈夫ですよ。
- 大井
- そうなんですか(笑)? 不安に……ならないですか?
- 坂尾さん
- いや、めっちゃなります。不安だらけです。
- 大井
- それはどう乗り越えたんですか?普通は不安になると立ち止まる人が多いと思いますが。
- 坂尾さん
- そうですね。でも不安だから逆に動くんじゃないですかね。知り合いの経営者が言っていたんですけど、「自分たちの仕事がうまくいっていて、不安を感じなかったら、そのビジネスは止まる」と。不安だから何か新しいことをしようとか、誰かに会って相談しようとか、そういうところから何か生まれるんじゃないでしょうか。
僕は不安で不安で不安で仕方なかった時期は、毎日誰かとご飯行くようにしていました。その時期の出会いが、確実に今に繋がっていると思います。
- 大井
- なるほど。奥沢で店を始められて、一年間くらいは大変な時期もあったと聞きましたが、その時はどうされていたんでしょうか?
- 坂尾さん
- その時は辛かったですね……大変でした。ポールバセットで働いていた時は、一日に何百杯とコーヒーが出るんで、普通に美味しいものを出したら売れるだろうと思っていたんですよ。でも全然そんなことはなくて。
立地も全然良くなかったし、買いに来た人に「このコーヒー高いじゃん」と言われたこともあります。シングルオリジンも流行ってなかったし、売っている店もなかったので、「まずは知ってもらおう」と思いましたね。
- 大井
- 知ってもらうために何をされたんですか?
- 坂尾さん
- 色々な場所でワークショップをやらせてもらいました。店でもやったし、地方にも行きました。あの頃が、一番ワークショップをやっていた時期だと思います。というのも、当時は自分のお店にずっといてもお客さんが来ない事も多くて、そうするとすごく色々考えてしまうんですよね……。だから、なるべく外に出るようにしていました。お店の外でワークショップをやらせてもらったり、ケータリングに行ったり、どこでもコーヒー淹れていました。
- 意識を外に向けていれば、出会うべく人に出会える
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- 坂尾さん
- あとは勉強会に行っていました。飲食系よりもWEBや写真、ブランディングなどの勉強会に行って、人脈を作りました。
- 大井
- 人脈はやはり大事でしたか?
- 坂尾さん
- 大事じゃないですかね、たぶんですけど(笑)。ただ、どう作るかだと思うんですよね。常に自分をプレゼンテーションして、気持ちを共有して、盛り上がれるというのが一番大切で、自然誘発的にできる人脈の方が大事だと思っています。
昔は職業関係のパーティみたいなものに行ったこともあるんですけど、ああいうところでできる人脈は結局、名刺交換をして終わり。出会うべき人に出会って繋がっていくには、自分を常に高めてプレゼンテーションすることじゃないでしょうか。
- 大井
- 私も最近思うんですけど、人って出会うべくタイミングで出会うんだなって。
- 坂尾さん
- そうですね。そういう時があるんじゃないですかね、その人の中で。
- 大井
- タイミングが合わなくてお話できなかった人も、今こうやってお話ができているみたいに。
- 坂尾さん
- 常に意識を外に向けている人たちが、出会うべくして出会うんだと思いますね。
- コーヒーを通して、人々の生活を豊かに
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- 大井
- ONIBUSの奥沢店が軌道に乗り始めた後、2014年には渋谷の道玄坂にABOUT LIFE COFFEE BREWERS(アバウトライフコーヒーブリュワーズ)をオープンされましたね。ONIBUSでなくお店の名前を変えて、渋谷にお店をだされたのはどうしてですか?
- 坂尾さん
- コンセプトや形態が全く違うんですよね。ONIBUS COFFEEはゆったりした住宅街の“路地裏”というイメージがあって焙煎もしています。ABOUT LIFEをオープンするぐらい頃から、僕らがやっているコーヒーが盛り上がり始めてきていたので、ABOUT LIFEから「もっとコーヒーを飲む人を増やしたい」という想いが強くありました。
- 大井
- それで渋谷にお店を出されたんですね。
- 坂尾さん
- そうですね。場所は絶対、渋谷。人がたくさん集まる場所で、できれば桜ケ丘や道玄坂、宮益坂などオフィス立地。半年くらい探して見つかったのがあの物件だったんです。というのも、一見様よりも毎日来る人が多い場所にしたい。毎日僕らのコーヒーを飲んでもらうことで「その人たちの生活が豊かになる」そんな体験を与えられるお店にしたいと考えていました。
それから、“渋谷でコーヒーを広める”という意味では、自分たちのコーヒーだけじゃなく「美味しいコーヒーの選択肢がたくさんある」ということを伝えるために、多店舗の豆も飲めるという、当時では珍しい“フレンドシップロースター”を始めました。
- 大井
- 面白い取り組みですよね。選択肢が増えることで、コーヒーに興味を持った人もいたと思います。
- 坂尾さん
- それからABOUT LIFEでは、「生活について考えよう」というメッセージも発信したくて、お客さんにそれをプレゼンテーションできるような人にならないと、という意識もあったんです。
- 大井
- なるほど、そうなんですね。そこで自転車が関係してくるんですね。
- 坂尾さん
- 自転車は単純に僕たちが好きなんですけど、通勤に使えばエコだし、健康にもいい。乗っていて気持ちもいいし、僕は自転車生活に切り替えて東京が大好きになったので。「自転車に乗ることでこんなに生活は変わるんだ」ということも伝えられたらと思っています。
実際、ABOUT LIFEでは自転車で来て降りずに注文して買っていく人もいます。そこに、たまたまブリヂストンの人がいて「これが理想だね」というところからRATIO &Cの話に声をかけて頂いたんです。
- 大井
- 私は最近になって、「コーヒーと自転車は相性がいいんだ」と知りました。
- 坂尾さん
- ほんとですか。どちらも日常にあるものですよね。毎日ことならば、ストレスがあるものよりもないものを選んだ方がいいかなと思っています。自転車だけの話じゃないですけどね。例えば、食事の時はなるべくいい野菜を摂る、とかそういうことでもいいと思います
- この続きは、Vol.5「目標実現のために、坂尾さんが大切にしていること」で!次回は10月7日(金)公開です。どうぞお楽しみに!
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