無限の可能性を追求するコーヒーバー(Vol.1)
CafeSnap発案者の大井がお話をお伺いしているプレミアムコラム。第21回目にお迎えするのは、スカイツリーの側に店を構えるUNLIMITED COFFEE BARのオーナー、松原大地さんと平井 麗奈さんです。
豆の産地や生産者の想いを伝えながら3種類のコーヒーを作る“バリスタチャンピオンシップ”の審査員でもあるお二人が、コーヒーとバリスタの“無限の可能性”を伝えるために作ったカフェとトレーニングラボについて、じっくりお話を伺いました。
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(左)松原 大地さん、(右)平井 麗奈さん
松原 大地さん : 大学卒業後からツールドフランスの出場を目標に、ロードレースの競技選手生活を送る。その傍ら、エスプレッソマシンを自宅に購入。コーヒーやラテアートを趣味として知識を深めていたことがきっかけで、後にエスプレッソマシン「マルゾッコ」を輸入しているラッキーコーヒーマシンに入社。2009年にはジャパンバリスタチャンピオンシップのジャッジ(審査員)に合格。現在は日本で3人しかいないワールドバリスタチャンピオンシップの審査員も務めている。
平井 麗奈さん : イタリアに語学留学中、ホームステイ先がバールだったことをきっかけにコーヒーと出会う。バールの文化に魅せられ帰国後はイタリアンバールのチェーン「セガフレード・ザネッティ」のインストラクターとして日本事業立ち上げに寄与。2001年には日本で初開催されたジャパンバリスタチャンピオンシップで3位入賞。20年のバリスタ経験と10年間におよぶバリスタ競技会の審査員経験を活かし、UNLIMITED COFFEE BARのバリスタトレーニング及びスペシャルティコーヒーの焙煎を担当している。
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- 大井
- 今日は貴重な機会をありがとうございます。まずはUNLIMITED COFFEE BAR (アンリミテッド コーヒー バー)について教えていただけますか。
- 松原さん
- UNLIMITED COFFEE BARは、“プロフェッショナルバリスタが作るスペシャルティコーヒーの素晴らしい味覚体験ができるお店”をコンセプトにしています。
- 平井さん
- 店名のUNLIMITEDは“無制限の”とか“限りない”という意味で、バリスタやスペシャルティコーヒーの“無限の可能性”を追求していきたいというのが店名に込めた想いです。
- 大井
- 名前も志もカッコいいなと思っていました。こちらではどのようなコーヒーを提供されていますか。
- 平井さん
- コーヒーはすべて自分たちで焙煎しているスペシャルティコーヒーです。ドリ ップ用、エスプレッソ用と、実際にコーヒーを淹れるバリスタという立場から考えるベス トなコーヒーを焙煎し提供しています。
私達が焙煎したコーヒーを抽出検証まで行い、クオリティチェックをしているので、美味しいことはもちろんですが、加えてバリスタがお 客様にコーヒーの産地や抽出方法、そしてそのコーヒーを表現する上で重要なフレーバー (風味)をしっかりご説明した上で飲んでいただけるようになっています。
コーヒーのメニューとしては、エスプレッソドリンク、ドリップなどのフィルターコーヒ ー、そしてコーヒーカクテルなど豊富です。特にコーヒーカクテルというジャンルは日本で さらに拡げていきたいと考えています。
- 大井
- コーヒーのお話はこの後さらに詳しく伺いますね。フードはいかがですか?
- 松原さん
- お店がそんなに大きくなくキッチンも狭いので、みんなで考えてできる範囲で作っています。メイン料理は6種類あってキーマカレーやジンジャーチキンライスが定番です。
- 平井さん
- フードは主に手作り。私達が一から考えて作っています。他にもスイーツやお酒のおつまみもあるんですよ(笑)。
- 大井
- 海外のレストランみたいですね。コーヒー専門店でこれだけ充実したフードメニューがあるのは珍しいですよね。
- 松原さん
- 2013年にバリスタチャンピオンシップの世界大会がオーストラリアであって、私も審査員として行ったんですが、オーストラリアはコーヒーがすごく栄えていてレベルが高いうえに、フードのレベルも高くて! 普通は美味しいコーヒー屋さんと食事の場所は別ですが、オーストラリアではひとつの店舗で食事も食後のコーヒーもめちゃくちゃ美味しい店がたくさんあったんです。それがすごくいいなと思いました。
- 平井さん
- 日本では美味しい料理を食べた後にコーヒーを探しに行く、ということが多いんですよね。これは私達の個人的な好みなんですが、「料理もコーヒーも一カ所で楽しめたら最高だな」と思っていて。(笑)
料理を食べてコーヒーを飲んでもいいし、料理を食べながらお酒を飲んでもいい。一つの場所を時間帯に合わせて楽しめたり、お酒を飲む人も飲まない人も、コーヒーを飲む人も、みんなが一緒にいられて、様々なスタイルでお店を楽しんでもらえる。自分達もそんな風にカフェを楽しみたいと思ってこの店を作りました。
- 自分好みのコーヒー探しをバリスタが丁寧にサポート
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- 大井
- 店内のデザインについてはいかがですか?
- 平井さん
- デザインでいうと、入り口側と奥では雰囲気を変えています。入口側は白基調にした清潔感のある“昼間のイメージ”。だからマシンもグラインダーも全て白にしています。逆に奥の半分はバーも兼ねているので“夜のイメージ”。コーヒーカクテルやお酒をいい雰囲気で楽しめるように、木を基調としたデザインにしています。写真で見ると、ここを境に印象がかなり違いますね。
- 大井
- 確かに真ん中で印象ががらりと変わりますね。ちなみに私が初めてUNLIMITED COFFEE BARに来た時、他の店と全く違うシステムですごく驚いたんですね。入り口の近くでバリスタがコーヒーについて相談にのってくれるスペースがあって、ドリンクが決まったら奥に進んでお会計をしますよね。どうしてこのようなスタイルになったのですか?
- 松原さん
- 他の店舗に行ったときに、キャッシャーの人とバリスタが別なことがあって、それが残念だなと思ったからです。キャッシャーの人にオススメを聞いてもバリスタじゃないのでコーヒーの詳しいことが分からなかったりするんですよね。
この店では中に入るとすぐにエスプレッソマシンがあって、その日のコーヒーやマシンを調整してるバリスタがしっかりと説明をします。作っているバリスタが一番コーヒーのことを把握していますし、コーヒーを選ぶところからバリスタと会話をして、豆の産地や味を聞いたり、自分が今日どんなものを飲みたいのかを話してからコーヒーを決めて頂く。そういう導線にしたかったので、こういう形になりました。
- 大井
- 初めての経験だったので感動しましたね。お店のオススメを押し付けられるのではなく、自分が飲みたいコーヒーまで案内してもらっている感じがして、素晴らしいホスピタリティだなと思いました。
- 松原さん
- 私達は、コーヒー店は飲食店の一部だと考えています。だから一般の方でスペシャルティコーヒーを全く知らない人がいらっしゃっても、ちゃんと説明をして、ホスピタリティを感じていただける、そんなモデル店舗になればいいなと思っています。
- 大井
- コーヒー初心者に本当に優しいお店ですよね。
- ジャッジとして、最上級の体験をお客様に還元
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- 平井さん
- コーヒーの説明を含めてサービススキルやカスタマーサービスに関しては、しっかりやろうとみんなで決めています。例えばドリンクはお客様の前で注ぐのですが、ラテなら“ラテアートを見せる”というよりは、注ぎたてのきめ細かい泡を飲んでもらいたいからです。
私達はもともとバリスタチャンピオンシップなどのジャッジ(審査員)なので、いつもバリスタが目の前で作った注ぎたてを飲めるんですよ。大会では注ぎたてじゃないとミルクのテクスチャ(質感)が美味しくなくなるので減点することになります。お客様の前で注ぐことで、最も美味しい状態で飲んでいただきたいんです。
- 平井さん
- それに私達は長年ジャッジをしているのですが、「大会だとバリスタたちが大会に向けて焙煎された特別なコーヒーを、目の前で注いでくれるけど、実際にそのバリスタのお店に行ったら同じようにやっていないところがほとんどじゃないか」と言われることがあるんです。
私達の店では「大会は大会、お店はお店」と諦めたくない。私達がジャッジとしていつも大会で体験している素晴らしいコーヒーをお客様にも体験してもらいたいんです。私達が勉強させてもらったことを還元するためには、大会と同じようにお客様の近くで注いで、注ぎたてのテクスチャを飲んでもらいたいのでお客様全員の目の前に行って注いでいます。
- 大井
- 最上級を知っていて、それをお客様に還元し届ける、それは素晴らしいことですね。
- 松原さん
- 本当はドリップコーヒーもお客様の目の前で作りたいんですけど、なかなかそれは難しいので、今はブリューバーの高さを低くして、どこからでも抽出が見えるようにしています。ただし最後にカップに注ぐところはお客様の目の前で。抽出や目の前で注ぐところを見ていただいて“体験”してもらいたいんですよね。
- 大井
- お客様としては作られたコーヒーを受け取るだけでなく、コーヒーが作られるところをバリスタと一緒に体験できる、それは価値あるコーヒーをいただくうえで重要なことですね。
- この続きは、Vol.2の「世界基準のコーヒー&コーヒーカクテルの魅力」で!次回は11月8日(火)公開です。どうぞお楽しみに!
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