創業26年、さらなる成長と変化で躍進する丸山珈琲(Vol.1)
CafeSnap発案者の大井がお話をお伺いしているプレミアムコラム。第26回目にお迎えするのは、長年にわたりスペシャルティコーヒー業界を牽引し、昨年創業25周年を迎えた丸山珈琲の丸山健太郎さんです。
昨今はコーヒー産地の訪問、豆の買い付け、品評会の参加と、一年の約2分の1を海外で過ごすという丸山さん。Vol.1ではお店で提供しているコーヒーのこだわり、そして世界で最も数多く参加しているという“コーヒーの品評会”について伺いました。
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丸山 健太郎さん
丸山珈琲代表。1991年に軽井沢で創業。現在、軽井沢と東京を中心に9店舗&1セミナールームを経営している。10年にわたり焙煎を研究しながら、当時日本では珍しかったスペシャルティコーヒーにいち早く注目。世界中のコーヒー農園や品評会に出向き仕入れたコーヒーは、透明感と素材がもつ個性が引き出された味わいが特徴で、多くの人々から支持されている。また昨今はバリスタ世界チャンピオンを含め、数々のバリスタチャンピオンを丸山珈琲から輩出。日本を代表するスペシャルティコーヒー専門店だ。
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- 大井
- 今日はどうぞよろしくお願いいたします。まずは丸山珈琲について伺います。昨年25周年を迎えられましたが、丸山珈琲を今、丸山さんはどのように見ていらっしゃいますか?
- 丸山さん
- そうですね……。人間でいうと10代の後半というか、少年の終わりでこれから青年になるところかなと思っています。
お店を始めた頃は、丸山珈琲をひとつの“店”として見ていましたが、時の流れとともに、店舗が増えて、比較的長い尺で丸山珈琲のことを考えるようになり、今は「やっと成人のちょっと前かな」というイメージを持っています。
- 大井
- そうなんですね。私はすでに完成されているものだと思っていました。
- 丸山さん
- いえいえ、まだまだ!人間でいうと「だいたいこれくらいの体格かな」というところまではできてきましたが、これからさらに成長したり、色々変わっていくと思います。
- 重視するのは透明感、甘さ、後味のきれいなコーヒー
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- 大井
- 丸山珈琲はスペシャルティコーヒーの専門店として大変有名ですが、お店ではどのようなコーヒーを出されているのでしょうか?
- 丸山さん
- すごく簡単にいうと、“きれいな味わいで、甘いコーヒー”を提供しています。私は自己紹介をする時によく「コーヒーの品評会に世界で一番出席している人」と言っているのですが、早いうちからスペシャルティコーヒーの概念を取り入れ、Cup of Excellence(カップ オブ エクセレンス)などの品評会に参加するようになったので、そこでの評価基準が身体に染みついています。そういったこともあって、きれいな味わいと甘いコーヒーを選んでいますね。
それからもうひとつ大切にしているのが“後味”。和食を考えてみても、美味しいものはやはり後味がいい。私が26年前に軽井沢で創業したとき、お客様の多くは別荘族の比較的年齢が高い方で、必ずしもコーヒーマニアではありませんでした。ですが、美味しいものをたくさん食べている彼らが絶対的に重視するのは後味でした。だから私が焙煎したコーヒーも、少しでもざらつきや、嫌な苦味、渋味があったりすると、熱心なお客様からお電話やお手紙をいただきました(笑)そういった意味では、軽井沢のお客様に“後味”について鍛えていただきましたね。
- 大井
- そうなんですね。軽井沢でお店を始められたことは素晴らしいスタートでしたね。
- 丸山さん
- そうですね。
- コーヒー農園のある国で開催される“品評会”とは?
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- 大井
- 先ほど「世界一、コーヒーの品評会にでている」とおっしゃっていましたが、コーヒーの品評会というのはどういうものなのでしょうか?
- 丸山さん
- コーヒーを生産している国では様々な品評会があります。一般的な品評会はわりとカジュアルで、豆のお披露目会のような場合もあります。その一方で、各国で一番厳格な品評会として開催されているのが“Cup of Excellence”です。
スペシャルティコーヒー専門店でCup of Excellenceの称号を冠しているコーヒー豆を見た事がある方もいるかもしれませんが、それはその国で最も厳しい基準、そしてルールに厳格に沿った品評会で評価を得た豆ということになります。
- 大井
- 品評会ではどんなことをしているんでしょうか?
- 丸山さん
- “カッピング”というコーヒーのテイスティングで豆を評価していきます。例えば、コスタリカを例にあげると、国内にある数百のコーヒー産地の豆から選ばれた約50~60種を私たちのような審査員が一週間かけてジャッジしていきます。
品評会では”世界のオークションにかけても恥ずかしくない物を選ぶ”というイメージで行うので、数を絞っていくというよりは点数をつけていきます。現在は、86点以上のスコアを得たものがCup of Excellenceの称号を得ることができます。
- 大井
- 品評会に一週間もかけるのですか!?
- 丸山さん
- 品評会はただ行ってカッピングするのではなく、準備も手間も時間もかかるんです。たとえば、一回のセッション(カッピング)は準備、カッピング、討論も合わせると3時間以上かかるんですよ。
- 大井
- そうなんですね!一週間ずっとカッピングをしているんでしょうか?
- 丸山さん
- 1週間のスケジュールでいうと、だいたい日曜日に到着して、月曜日に “基準合わせ”をします。この基準合わせが非常に重要。審査員は世界中の様々なところから来ているので、それぞれ感覚と点数の付け方が違います。評価基準をすり合わせるために、事前に3、4セッションしながら「このくらいのコーヒーの場合は何点」とコミュニケーションをとるんです。
火曜日と水曜日は第一次審査で、各日3セッションずつ行います。3セッションだと、だいたい朝の8時頃から始めて、昼の2時すぎくらいまで。昼ごはん食べると、けっこうぐったりします。(笑)その後、農園行ったり、休んだり……。第一次審査が60種くらいだとすると、第二次審査へ進むのは30種くらいです。
木曜日は第二次審査。残った30種を4セッションぐらいに分けてカッピングし、Cup of Excellenceの称号を与えるロット(豆)を選出します。金曜日はベスト10を再度並べて最終確認。ベスト10が決定すると、金曜日の午後からは優勝や入賞したコーヒーの表彰式が行われます。
- 大井
- ト-ナメント選みたいな感じで選んでいくんですね。
- 品評会でコーヒーの世界基準を常にアップデート
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- 大井
- 丸山さんは“世界で最も数多く品評会に出ていらっしゃる”ということですが、世界中に赴くのは大変ですよね。そこまでして世界の品評会に出席されるのはなぜでしょうか?
- 丸山さん
- 一言でいうと、“世界基準を常に自分の基準にしておきたいから”です。コーヒーは、コーヒーカップに試験紙や試薬を入れて、点数や味わいが調べられるものではないですよね。
何人もの人が一緒にカッピングをして「このコーヒーにはチョコレートのような味わいがある」と判断した人が多かった時にはじめて「チョコレートのような味わいがある」と定義されます。これは実際、人間が味わう以外に掴みようのないもので、コーヒーを扱う人として持っていないといけない感覚です。
それと同時に、品評会では世界中の様々な審査員が集まってきます。どんな国の、どれくらいの年齢の、どんな経歴のある人が、それぞれの豆をどう評価してどのようなコメントをするのか。一緒にカッピングをしていると色々なことがわかってきます。
それは世界のコーヒーの評価でもあるので、僕は常にそれをアップデートしておきたい。だから世界中の品評会に参加しています。
- 大井
- なるほど。世界中の品評会に行くことで、最先端かつ世界標準の豆の評価を知ることができるのですね。
- この続きは、Vol.2「丸山珈琲のはじまりと当時のコーヒー文化」で!次回の公開は3月7日(火)です!どうぞお楽しみに!
Photo by Hidehiro Yamada
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