丸山さんが世界規模でコーヒーを考える理由(Vol.4)
丸山珈琲の丸山健太郎さんにお話を伺っているプレミアムコラム。
Vol.4では、世界に通用するバリスタの育成、そして丸山さんご自身が品評会や産地の訪問、豆の買い付けなどで一年の活動の半分を“海外”におかれていることに注目。丸山さんがコーヒーをグローバルで考える理由をお聞きしました。
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- 世界と勝負するバリスタを育成
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- 大井
- スペシャルティコーヒー業界を長く牽引されてきた丸山さんにとって、この26年間で印象的なチャレンジはありますか?
- 丸山さん
- 2006年頃からバリスタチャンピオンシップに出場する“バリスタの育成”に力を入れ始めたことでしょうか。丸山珈琲はそれまで豆屋としてのイメージが強かったのですが、バリスタチャンピオンシップに参加するバリスタを育てることで、世界と繋がって、世界基準や世界の共通認識を持ち、世界と勝負する、そう考えるようになりました。
- 大井
- 実際、丸山珈琲は日本人初のバリスタ世界チャンピオンを輩出していますよね。世界で通用するバリスタの育成は、先ほど伺った“突き抜けた味が、人の心を動かす”という話にもつながるのかもしれませんが、“バリスタも一流であるべし”ということでしょうか?
- 丸山さん
- そうですね。それから、僕が産地に行くときに経由する、アメリカやヨーロッパのコーヒー文化を見ていたことも影響していると思います。
2001~2003年頃だったと思いますが、街で人気のスペシャルティコーヒー店に行くと、そこには必ず活躍しているバリスタがいて、そのバリスタが作るカプチーノやエスプレッソを求めてお客さんが列を作っていたんです。よいバリスタのいるところには人が集まる。「いつか日本もこういう時代が来るんじゃないか」と思い、バリスタの育成に力を入れ始めました。
- 丸山さんの考える“よいバリスタ”とは
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- 大井
- 丸山さんにとって、“よいバリスタ”とはどのような人でしょうか?
- 丸山さん
- まず、ちゃんとあいさつができる!社会人として(笑)それから急いでいる人なのか、ゆっくりしたい人なのかを見て、お客様のご希望に合わせてコーヒーを出すことができる。話したいと思われている人には話しかけるし、そっとしておいてほしいと思っている人には、そっとできる。そして、まあまあ美味しいコーヒーが出せればバリスタとしては合格です。もちろん、すごく美味しいコーヒーが出せればさらに素晴らしいですね。
- 大井
- お客様の気持ちを察することができる、それがバリスタにとって最も重要なんですね。
- 丸山さん
- そう、基本的にサービスマンですからね。
- コーヒーを取り巻く“環境の変化”を見逃さない
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- 大井
- 丸山さんは一年の約半分を海外で過ごされていますが、品評会以外にどのような目的で海外に行かれるのでしょうか?
- 丸山さん
- 海外にいるうちの3分の2はコーヒー豆の買い付け。あとはスペシャルティコーヒー協会のショーやセミナーの講師として出向いています。
- 大井
- 豆の買い付けは、産地や農園に行かれているんでしょうか?
- 丸山さん
- そうですね。主にいつも買い付けしている農園に行って、その年の状況を見て回ったり、カッピングをして豆を買っています。
- 大井
- 農園に行くことはどうして大事なのでしょうか?
- 丸山さん
- 毎年農園に行っていますが……実は、農園自体はそんなに変わりません。コーヒーは農作物なので小さい木が翌年ものすごく大きく成長している、なんてことはないんですよ。
それでもなぜ農園に行くかというと、一番の理由は“副次的な情報を多く得ることができる”からです。
例えば今、私が一番気にしていることは“気候変動”です。年末はインド、ケニア、エルサルバドルに行きましたが、インドでは「今年のモーンスーン期(雨期)の降雨量は例年の65%くらいだった」と聞きました。それから「ケニアでは……」と、それぞれの国で様々な情報が入ってきます。
環境は緩やかですが確実に変わりつつあって、例えば僕が小学生だった頃、「北海道ではいいお米が穫れない」と言われていました。でも今お米の品評会を見ると、北海道産がトップクラスに入っていますよね。ワインも以前は山梨が有名でしたが、今ではどんどん北の産地が注目されてきています。
気候や環境は数ヶ月で急に大きく変わるものではありません。ですが、状況はゆっくりと変わっています。だからこそこれからの5年、10年を見据えて、品質の高いコーヒー豆を安定して仕入れるためにどんな準備をしておくべきか、世界中で情報を得ながら考える必要があると思っています。
- 丸山さん
- それから実際、産地で生産者と一緒に農園を回ると、農園の話だけでは終わらないんですよ。国内情勢の話になり、選挙の話になり、家族の話になる。それは結果的にコーヒーに関わってきます。
生産者はコーヒー栽培のプロなので、基本的に作っているコーヒーの品質にブレはありません。ただ、生産者の家庭になにか事件があると品質が大きく変動するんです。「お父さんが酒飲みで出て行ってしまって一時的に品質が下がったけれど、代わりに奥さんがコーヒーを作り始めたら品質がぐっと良くなった」なんて話はすごくよくあります。生産者と話をして一緒にご飯食べて、一緒に作業をする。そうすると、そのコーヒーを取り巻く環境が色々と分かってくるんです。
- 大井
- 美味しいコーヒーを継続的に仕入れるために、コーヒーを取り巻く環境の変化を、地球規模の視点と生産者目線の両方で見ていらっしゃるんですね。
- この続きは、VOl.5の「コーヒー業界と丸山珈琲のこれから」で!次回は、3月17日(金)更新です。どうぞお楽しみに!
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