美しいラテアートで魅了する、女性バリスタだけのコーヒー店(Vol.1)
CafeSnap発案者の大井がお話をお伺いしているプレミアムコラム。第27回目にお迎えするのは、“バリスタが全員女性”というコーヒー店、LATTEST OMOTESANDO Espresso Barのマネージャー、前田 初(うい)さんです。
男性が多いコーヒー業界で、“女性のバリスタを世に送りだす”というコンセプトを掲げるLATTEST。コーヒーへの愛情と情熱を持って作られる美しいラテアートには、女性バリスタならではの感性と美意識が宿っています。
女性だからこそ作ることのできる味、提供できるホスピタリティ……、Vol.1では前田さんにお店や、こだわりのドリンクメニューについてお伺いしました!
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前田 初さん
LATTESTマネージャー、バリスタ、焙煎士。ラテアートの美しさに惹かれ2014年LATTESTに入社。ラテアートの技術を極めるとともに、約半年前よりシェアロースターで自ら焙煎を開始。この春、焙煎豆でエントリーし、カッピング審査を経て上位5店舗が出店チケットを手にすることのできる“COFFEE COLLECTION 2017 Spring”のDISCOVER企画において、みごと優勝。「女性が創るブラックコーヒーを伝えたい」と、自らも切磋琢磨し続ける注目の女性バリスタだ。
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- 女性バリスタを世に送り続けるLATTEST
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- 大井
- 今日はどうぞよろしくお願いします。LATTEST(ラテスト)は先日、5周年を迎えられましたね。おめでとうございます!まずは、どのようなお店か教えていただけますか?
- 前田さん
- LATTESTは男性が多いコーヒー業界の中で、“女性バリスタを世に送りだす”というコンセプトを掲げているコーヒー店です。現在、表参道と麻布十番のお店で働いているバリスタは全員女性。最近は女性のバリスタもだいぶん増えてきましたが、LATTESTは特に女性バリスタが活躍できる舞台の整っている店だと思います。
- 大井
- “バリスタが全員女性”と聞くと、つい癒し系の空間を想像しがちですが、お店のデザインはどちらかというと無骨で男性的な、カッコいい印象ですよね。そのギャップが現代の女性像を表現しているようで、私はすごく好きです。
- 前田さん
- バリスタが全員女性ということだけでイメージはすでに柔らかいので、店はコンクリートなどを使って固めに、男性でも入りやすい雰囲気にしています。カッコいい空間で“女性ならではのコーヒーを作る”、それはLATTESTのひとつの個性ですね。それから表参道店は今日のようにアートを展示することも多いので、この無機質な感じは丁度良いんです。
- 大井
- LATTESTは表参道と麻布十番の2店舗があると思いますが、麻布十番はどのような雰囲気でしょうか?
- 前田さん
- 麻布十番の店は昭和初期の古民家をリノベーションした建物に入っていて、1つの場所を2つの店舗でシェアしています。朝から夜18時までは和菓子屋さんが、LATTESTは19時から夜の24時までの営業です。
お座敷席もありますが席はほぼカウンターになので、感覚としてはイタリアのバールのようなイメージ。サクッと一杯飲んで、カウンター越しに会話ができる空間ですね。麻布十番のお店では、自家焙煎のお豆を使用したコーヒーカクテルなどもご用意しています。
- 大井
- LATTESTという店の名前にはどのような想いが込められているのでしょうか?
- 前田さん
- “LATTEST”という言葉には、英語で最上級を表す「~est」と、artist(アーティスト)のように職人技術を持つ人を表す「~st」という文字が入っていています。私達の造語になるのですが、メッセージとして“最上級のラテを作る職人”という意味が込められています。
- 大井
- なるほど。職人のようなこだわりを持ったバリスタが最高のコーヒーを作っている、ということですね。
- まかないドリンクが一躍、看板メニューになった“ラテスト”
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- 大井
- 提供されているドリンクはどのようなものがありますか?
- 前田さん
- コーヒーはエスプレッソを使ったドリンクが中心で、看板メニューは店の名前にもなっている“ラテスト”です。これはもともと、この店がオープンする時に監修いただいた、元STREAMER COFFEE COMPANYの澤田洋史さんがお店で飲んでいた“まかないドリンク”が原案なんです。
- 大井
- 澤田さんは2008年のフリーポア ラテアート ワールドチャンピオンになられて、その後、日本や海外にラテアートの魅力を広められた方ですよね。
※フリーポア ラテアート:エスプレッソが入ったカップにミルクを注ぎながらアートを描いていくラテアートのスタイル
- 前田さん
- はい。当時はドリンクを作る時に抽出したエスプレッソをメジャーグラスで計っていたそうなんですが、そのメジャーグラスに冷たいミルクを先に入れ、ミルクの表面に浮かぶようにエスプレッソを落として(抽出して)みたのが始まりだそうです。
LATTESTのオープン前に、澤田さんのもとで研修を受けていた先輩方が、その“まかないドリンク”の美味しさに感動してお店の看板メニューになりました。
- 大井
- ミルクに落ちていくエスプレッソのグラデーションも美しいですよね。
- 前田さん
- そうですね。ラテストはマシンからエスプレッソを直接注ぐので、表面に浮いたエスプレッソが徐々に下のミルクに向かって落ちていく変化が楽しめます。
飲むときも一口目は落とし立てのあたたかいエスプレッソが味わえて、2口目からは冷たいミルクとエスプレッソがだんだんと混ざり、温度や甘さ、バランスの変化を感じることができます。
- 大井
- たしかに!ひとくちひとくち違うのは飲んでいて楽しかったです。特に一口目はエスプレッソの豆の味や香りを感じられました。
- 前田さん
- ラテストで使用しているお豆は、約半年前から始めた自家焙煎のもので、豆の個性を強く感じられるエスプレッソの“本当に美味しいところだけ”を抽出しているので、濃厚でとても贅沢なドリンクです。定期的にお豆の種類を変えているので、いろんな表情のラテストを楽しんで頂いけると思います。
- 美しいラテアートを作るために求められる、繊細なテクニックと努力
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- 大井
- それからなんといってもラテアートが人気ですよね。
- 前田さん
- ありがたいことに最近はSNSでお店を見つけてくれたお客様が「ラテアートをしてもらえるメニューはどれですか?」と聞いてくださることが多くて、すごく嬉しいですね。ラテアートを見たいというお客様には「カフェラテ」か「カプチーノ」をオススメしていますね。
- 大井
- カフェラテやカプチーノで使われている豆も自家焙煎のものでしょうか?
- 前田さん
- カフェラテとカプチーノには、オープン時から澤田さんの“ラテアートブレンド”を主に使っています。というのも、はやりLATTESTができてからの5年間、ラテアートブレンドの味が好きで通ってくださっているお客様もたくさんいらっしゃるのでメインで使わせていただいていることと、ラテアートブレンドは自家焙煎の豆よりも少し深めの焙煎なので、“クレマ”ができやすく、アートを描きやすい。まさにラテアートに向いているブレンドなんです。
※クレマ:エスプレッソを抽出した時に表面にできる細かい泡
- 大井
- どうしてクレマがあるとアートが書きやすいのでしょうか?
- 前田さん
- クレマはいわば絵を書くときのキャンバスなので、クレマがしっかりあるとミルクでアートを描きやすくなります。
それからカフェラテやカプチーノの構造にも関連しています。カフェラテやカプチーノを分解してみると、使っているのはエスプレッソとミルクだけですが、厳密にいうとミルクは “泡のミルク”と“液体のミルク”の2層になっています。
よくコーヒー店でカフェラテを飲むと、上のほうはきめの細かい泡のミルクで、下のほうには液体のミルクを感じられますよね。それは泡のミルクを上に持ってくることで、口当たりをまろやかにしたり、ミルクの甘さを感じやすくするためです。
でもこの構造はミルクを単純に注いだだけで作れるものではありません。ラテアートをするときはまず “泡のミルク”と“液体のミルク”ができるようにスチーマーでミルクを温めること、そしてその比率をコントロールしながらカップに注ぐことが求められます。その時にクレマがあったほうが“泡のミルク”と“液体のミルク”の比重を調整しやすいんです。
- 大井
- ラテアートの美しさと美味しさの裏に、様々な技術とそれを叶えるための努力が凝縮されているんですね!
- 女性ならではのセンスが光るシーズナルメニュー
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- 前田さん
- それからもうひとつのオススメとして、表参道の店では月に1度変わるシーズナルメニューも用意しています。3月はあらごしの桃ジュースをスチーミングした“ピーチサイダー”。毎月1日に必ずお店に来てくださるお客様もいらっしゃって、私達もレシピ開発にかなり力をいれています。
- 大井
- オリジナルドリンクのレシピもみなさんで考えられているんですね。ちなみに今までに特に印象的だったシーズナルメニューはありますか?
- 前田さん
- たくさん作ってきましたけど、かなり凝ったのは……“イチゴもちラテ”ですね!
- 大井
- イチゴもちラテ!!すごい!イチゴにおもちも入るんですか!!
- 前田さん
- はい(笑)白玉団子とあんこ、イチゴとミルクで作りました。その時は、元々「あんこがミルクとまず合うだろう……」というところからレシピを考えていったんです。
- 大井
- お客様の反応はいかがでしたか?
- 前田さん
- 好評をいただいたのですが、表参道は外国のお客様が多いので、とにかく説明がしづらくて……!ちょっと困りました(笑)
- 大井
- たしかに!ミルクにあんこやおもちというのは、日本ならではのペアリングですよね。また発売される予定はありますか?
- 前田さん
- 今のところイチゴもちラテの予定はないですが、シーズナルメニューは常に変えたり進化させているので、今後も様々なメニューを提案していきたいですね。
- この続きはVol.2の「美しく・美味しいラテアートを作る秘訣 」で!次回の公開は3月28日(金)です。どうぞお楽しみに!
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