心を映し出す、コトバ（Vol.3）

写真集食堂めぐたまのときたまさんとおかどさんにお話をお伺いしている対談。Vol.3では、ときたまさんの「コトバ」を使ったアーティスト活動に迫ります。

大井: ときたまさんは、イベントを企画されながら、アーティストとしてご活躍されていますが、どんな活動をされているのですか？

ときたまさん: 基本的には“コトバを使った作品を作る”ことですね。コトバを作って毎週、友人や知り合った人にハガキで送る、というのを22年ぐらいやっています。

文章で長く書いてあると、それを文章として理解してしまうけど、あえてみんなが知っている短いコトバで届けるんです。コトバだけがいくと、頭のどこか一点が刺激されて、波紋のように広がっていくから。その人の頭を刺激したいんです。

大井: そういった活動をしようと思われたきっかけは？

ときたまさん: もともと30代で「何かを作りたい、表現したい」という欲求が湧き出てきたんだけど、何をしたらこの気分を表現できるのかが分からなくて。

「自分は何が向いているのかなー」って試行錯誤していたときに、飯沢さんに言われたんです。「確信があるものをやったほうがいいよ」って。

その頃、私にとって確信があったのが「短いコトバ」。コトバを作る人は他にもいるけれど、私はそれを誰かに届けて、読んでもらって、反応してもらって、私とおしゃべりする。そこまでしたいなと思って。だから、作品をハガキにして毎週出しているんです。送ってしまえば、嫌でも届くでしょ（笑）

大井: では、送られたハガキをきっかっけにコミュニケーションが始まることも？

ときたまさん: 届いたコトバを読んで「元気になった」とか「好きなコトバは自分の机の周りに貼っています」と連絡をもらったり。知り合いの事務所に行ってみたら、言葉が壁に貼ってあって「この人これが好きなんだー」と知ったり。

大井: きっと、人によってピンとくるものや心に入ってくるものが違いますよね。

ときたまさん: 人によって、またその時々で違うんですよね。こないだは、コトバを書いたハガキを1000枚作って、天井に展示していたんです。よくお店に来るお客さんが「今日はこれが気になる」とか、「こないだはこれ、気が付かなかったけど、今日はこんな気分」とか。反応が日によって違って、なかなか楽しかったですよ。

人によって、「そう思えばいいのか」とか、「全然わからない」とか。同じコトバでも、人によって、全然違う意味にとったりするんですよね。

ときたまさん: 例えば、この陽毛（ようもう）というのも……なんだと思います？

大井: え！！ずっと考えていました……！！

全員: あはははは！

ときたまさん: そうやって思わず「なんだろう」と考えてもらえると嬉しい。私の今までのリサーチによると、7割ぐらいが“陰毛”の反対語をイメージする。陽は陰の反対語で、対になっているから。私はほとんどの人がそう思うのかなって予想していたんだけど、実際はそうでもなくて……。

他の人は、陽は太陽の“陽”で、きらきら光るものを想像したり。“ヨウモウ”って音から入る人もいる。ヨウモウは“羊毛”で、羊の毛の暖かくてふわふわな感じをイメージするみたい。

そうやって同じコトバでも、色々な頭があるから、人によって全然反応が違う。そういうのを話すと面白いじゃない。コトバはそのきっかけ。気分や、その人が心配していること、その人の考え方に結びついてコトバが発展していくの。

ときたまさん: 「しないをする」っていう言葉があってね。大井さん、どういう意味だと思います？

大井: 「しないをする」は……「ダラダラする？？」

ときたまさん: あははは！新しい！ある人は、「しないをする」を「今までした事のないことをする」と解釈したのね。

大井: あー！ちゃんとしてますね！私、ダラダラしたいのかな。疲れているのかしら？（笑）

ときたまさん: その人は、「今までしていなかったことをしていきたい」って思って、実際に色々なことを始めるきっかけになったみたいで。

別の人は“しない”ということと“する”ということは全く矛盾している反対のことで、その矛盾していることが、ひとつのところで共存している状態が気に入ったらしく「この言葉はとっても好き」って思ったみたい。みんな色々なことを考えるの。

大井: 背中を押してもらったり、感性が磨かれていきそうですね。

おかどさん: 私はときたまさんのコトバを病気の友達に、その日の気分で毎日送り続けたんですよ。そしたら、くすって笑ってくれたり、ちょっと元気になったりしてね。

大井: すごい力がありますね

ときたまさん: 短いコトバは人によって意味が変わるから。私はそうやって、使ってもらえることが一番。

（おかどさん）人に送るのは本当にいいよね。ぜひやってほしいです。

この続きはVol.4の「めぐたま流コミュニケーション術」で！次回更新は12月4日（金）です。お楽しみに！

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写真集食堂めぐたま（恵比寿）
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