人生の中で大切にしていること(Vol.4)
福岡にある「ソネス デリカテッセン&カフェ」のオーナー、木下さんにお話をお伺いしているプレミアムコラム。Vol.4では木下さんが大切にしていること伺いました。この17年間毎日欠かさずしていること、そして経営者として心がけていることとは?
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- 大井
- お店がスタートしてから15年以上経っていて、たくさんのご功績や経験があると思うのですが、木下さんが生きていく中で大切にしていることはありますか?
- 木下
- えーっと……かっこつけるわけではないんですけど、「日々の感謝」ですよね。例えば、初めて言うんですけど……僕はお店が始まるときと終わるときは自分の中で儀式があるんですよ。
仕事が始まるときは、お店に向かって「今日も一日よろしくお願いします」、仕事が終わるときはスタッフがいようと誰が居ようとお店に一礼をして出るようにしています。それを17年間、一日も欠かさずやっていますね。
スタッフに感謝しているし、お客さまにも当然感謝しています。人だけではなくて、すべてのものに感謝しなければいけなくて、その気持ちを僕が忘れてしまったら、僕はたぶんだめでしょうね。だから、大事にしているというよりも、それが根底にありますね。
- 大井
- そうするようになったのは、何かきっかけがあったのですか?
- 木下
- 変な話なんですけど……昔働いていたところでオバケがいて。
- 大井
- へー!
- 木下
- 見えたりはしないんですけど、声が聞こえたことはあって、それが誰かも分かっているんですよ。で、その方に「お店をすごく守ってもらっている」という気持ちがあったんですね。
- 大井
- 守護霊的な?
- 木下
- そうそう、そんな感じですかね。守ってもらっているので、「ちゃんと感謝の気持ちを伝えなきゃ」と思うようになって、気づいたらそれが習慣になっていたんです。
「今日はありがとうございました。明日もよろしくお願いします」「今日は一日暇だったんですけど、どうか一日やりきることができました」という感じで。誰もいなかったらそこまで言葉にして出せるんですけど、人がいたら恥ずかしいので、頭だけ下げて帰ります(笑)それを17年間一度も欠かしたことはないですね。それはお店に対しての礼儀であり、スタッフやお客さまへの日々の感謝の気持ちです。それがないと続けられないので。ほんと初めていいました、恥ずかしい話です……(笑)
- 大井
- いえいえ、素敵なお話です。教えてくださってありがとうございます。その他にされていることはありますか?
- 木下
- スタッフが働きやすい環境づくりは心がけていますね。業種業態によって違ってくると思うんですけど、飲食店は普通、スタッフは約3年で入れ替わると言われているんですよね。
でも、例えばこのソネスでは、今3人のスタッフがいるんですけど、一人は新しい子でまだ半年くらい。もうひとりが6年、もうひとりは10年ですね。うちは10年くらい働いてくれるスタッフがすごく多いんですよ。
正直そんな楽な仕事ではなくて、立ちっぱなしだし、早いときは朝一から深夜までのときもあるのですが、可能な限りケアをしたりフォローをしつつ、仕事の仕方や、やりがい、楽しさを伝えていくように心がけています。
特に今の若い子たちは、僕らの世代と違って“仕事を見て覚える”という感じではなくて“伝えて”いかないといけないんですよ、言葉で。僕らの時代は“見て覚えろ、盗んで覚えろ”でしたけど、今はそうじゃない。今の子達はやる気はあるんですけど、その方法や手段が分からないから、それをきちんと伝えて覚えてもらう。それは、スタッフに長く働いてもらえるように心がけていることのひとつですね。
- 大井
- 飲食店でスタッフが10年続くという話はあまり聞かないですね。スタッフの方々に伝えるうえで何か気をつけている点はありますか?
- 木下
- 伝えたり教えるためには、なぜそうなるのか理由や理屈が必要になるんですよね。なので、考えていることや感じていることをきちんと言葉で説明する“言語化”を意識しています。
始めのほうで僕は講師をしているという話をしたと思うんですけど、なぜそれを引き受けたかというと、考えていることやなんとなく感覚で感じていることを僕自身ちゃんと言語化する必要があると思ったからです。先生はそれを必然的にしなければいけないから、自分のスキルも絶対あがるかなと。
- 大井
- 言語化することによって自分自身の中でフィードバックされて、精度が上がっていきますよね。
- 木下
- そうですね。僕はフリーターの頃に店を始めて、人よりもたくさん遠回りをしてきた分、自分で読んだ本や経験があるから、それをスタッフに伝えたいですし、もちろんスタッフの中で僕よりも技術がある人からは逆に教えてもらうこともあります。
そうやってスキルや情報をみんなで共有しながら、仕事の意味や価値観、楽しさを体感させてあげたり、もちろん大変な仕事もあるんですけど、それをやることで自分の役割や嬉しさを体感してもらえたらなと思っています。
- 大井
- 木下さんが作りたい、理想のお店はどのようなものなのでしょうか?
- この続きは、2月5日(金)公開予定の「Vol.5 “生活に根付くカフェ”を目指して」で!どうぞお楽しみに!
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