コーヒーと人間の“合間”を目指して(Vol.2)
福岡・原田にある「〜おいしい珈琲の店〜 R's cafe」のコーヒーマスター、ヒラツカさんにお話をお伺いしているプレミアムコラム。Vol.2はヒラツカさんが幼い頃のこと、そしていま暮らしの中で大切にしていることを伺いました。
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- 大井
- ヒラツカさんはどんなお子さんだったんですか?
- ヒラツカさん
- 僕は小学生から……とにかく団体行動のできない子どもでしたね。
- 大井
- そうなんですね。(笑)
- ヒラツカさん
- ラジオ体操に行かない、子供会に行かない、ひとりでずっと遊んでいるっていう。習い事もしたくない、自分で遊びたいって感じでしたね。
- 大井
- ひとりで何をして遊んでいたんですか?
- ヒラツカさん
- 山に行って、虫をとっていました。あとは、せっかく田植えしたのを抜いたりとか。(笑)
- 大井
- やんちゃですね。(笑)自然が好きだったんですか?
- ヒラツカさん
- 自然が好きというか……とにかく、ひとりで遊ぶのが好きでしたね。団体行動が苦手だったんです。誰かにあわせるとか。
- 大井
- そうなんですね。中学生になってからはどうでしたか?
- ヒラツカさん
- 小学校の時に、それこそ一人でできるバスケをしていて好きだったので、中学に入ってからはバスケ部に入部しました。そのとき初めてチームプレイを経験して、チームプレイは大事だって事を知りました。(笑)
その後でいうと印象的だったこととしては高校ですね。僕が行った高校には環境科学科というちょっと変わった学科があって、授業で屋久島に屋久杉を見に行ったり、北海道に鶴を見に行ったり、自分で体験しながら環境問題を学んでく学科だったんです。
- 大井
- 印象に残っていることはありますか?
- ヒラツカさん
- いまだに思い出すと感動するんですけど……屋久島に行った時、永田浜というウミガメがあがってくる浜があって。ウミガメは人口の光りがだめだから、その浜の周辺1kmは電気を点けてはいけなかったんです。
だから夜はもう真っ暗で。そのぶん星がめちゃくちゃ見えるんですよ。あれはなんていうんでしょう……。価値感ががらっとかわった出来事でしたね。丁度、七夕の時期だったから、天の川も本当の川のようで。青い筋が流れていてすごかったですね。「人間のやれることじゃないな」って、自然の偉大さを感じました。
その頃からですかね、自分の中で「なんで1日を24時間で過ごさないといけないんだ」とか。そういうことを思いながら生きるようになりました。「誰がグレゴリオ暦って考えたんだ?」とか。あれはあれでよくできますけど(笑)
それで自分のリズムと1日24時間365日が合っていないと気付いたんですよ。
- 大井
- 合っていないというのは……周り速いということですか? 遅いということですか?
- ヒラツカさん
- 周りが早いって。すごく違和感を感じていました。
- 大井
- そうなんですね。もっと自分のペースでいきたいと……。その後、ライフスタイルでなにか変えたことはあったんですか?
- ヒラツカさん
- 「1日24時間というのを無視して生きよう!」と思って(笑)普通は、“朝起きて、夜寝る”で一日が終わるじゃないですか。それを“1日が始まって次の朝を迎えて一日が終わる”でもいいんじゃないかって、自分の一日を朝で終わることにしてみた時期はありましたね。
- 大井
- そこから何か気付いたことはありますか?
- ヒラツカさん
- それがきっかけで「なんで暦があるのか」を調べるきっかけにはなりましたね。昔の暦の捉え方は、自然の流れを少し分かりやすくした感じなんですけど、現代はカレンダーを見ても細かく数字が基準になっているじゃないですか。自然寄りだったものが、いつのまにか人間都合になってる気がしました。そういうところに自分の中で、感覚のズレがあるなと思ったんです。僕はどっちかといったら、昔の人の“目安”ぐらいのほうが合っている。
- 大井
- 細かい数字や、決まった区切りよりも……?
- ヒラツカさん
- そう。だって「1分1秒、季節は変わってるじゃないの!」って思うんですよ。「ここから1月ですよ」とか「ここから春ですよ」とか、決めた数字を捉えるよりも、その“合間”を感じるほうが面白い気がするんですよね。
- 大井
- 合間……
- ヒラツカさん
- その“合間の曖昧さ”にすごく大事なことがあると思っているんです。例えば、僕は写真も撮りますけど、写真は“現実”と“非現実”の合間のような、そうじゃないような。現実と非現実というか、こちら側とあちら側ですね。こちら側というのは人間都合や、現代にしか通用しない流行り廃りのような価値観や時間の感覚。あちら側というのは人間の意識が及ばない大きな存在や、自然の普遍的摂理みたいなものです。コーヒーはあちら側のものだと思ってるんですよ。
だから僕自身もコーヒーと人間をつなぐ合間の存在でありたい、そう思うんです。
- この続きは、2月16日(火)公開予定の「Vol.3 “2010年コーヒーの旅”の始まり」で!どうぞお楽しみに!
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