バリスタ日本一を決める大会で見たプロ魂（Vol.4）

コーヒー芸人として雑誌やテレビで活躍されているコーヒールンバ平岡さんにお話を伺っているプレミアムコラム。今回はコーヒー業界で大きな注目を集めるバリスタチャンピオンシップの舞台裏の話。そこで平岡さんが見たこと、感じたこととは？

大井: 平岡さんが目指されているゴールや夢はどのようなものですか？

平岡さん: テレビに出るというのはもちろんなんですけど、「コーヒーといえばあの人」みたいになれればいいかなと思っています。「手相といえばあの人」ってあるじゃないですか。「あの人がオススメしてるものを飲めば間違いないかな」と、そんな風に１つの新しいアイコンになっていければと、いや、なりたいと思っています。

大井: コーヒーをやりながらお笑いもやられていて、その両立はどうですか？

平岡さん: 両立……うーん。なんとなく自分では両立してるつもりなんですけど、ただ今はコーヒーのお仕事が多くなってきて（笑）。なので最近はネタにもさらに力入れて両方ないとだめだなと。両方あった方が面白いと思うし。そのバランスは気をつけてやっています。

大井: コーヒーだけでなく、芸人さんとしても売れて、両方でやっていきたいということですか？

平岡さん: 両方……、というか、目指してるところは一緒のような気がしていて。どうやって世の中に出るか、知ってもらうかということなんです。だからコーヒーが先行で「コーヒーの人だ、ネタ見たら面白かった」でもいいですし、「ネタ面白い人が、コーヒーも好きらしい」のどっちでも。どちらか関心を持ってもらえるストロングポイントがあればいいと思っています。

大井: コーヒー側でいうと、昨年末に開かれたSCAJ（スペシャルティコーヒーアソシエーションオブジャパン）の時の、日本バリスタチャンピオンシップの司会は大きかったのでは？

平岡さん: そうですね。ほんとに、ほんとに。SCAJの影響力はすごかったんですね。カフェに入ると、「名前は分からないけど、SCJAで赤いジャケット着ていた人だ」って、コーヒー業界ではなんとなく知ってもらえるようになりました。ご縁があって立たせてもらえて、嬉しかったです。

大井: 実際、決勝大会まで勝ちあがってきたプロのバリスタの方々を目の前で見たり、お話してなにか感じたことはありますか？

平岡さん: みなさん全員、トップのほうになればなるほど優しいですね。これはお笑いの方でもそうですけど、売れてる人ほど優しいんですよね。

バリスタチャンピオンシップでは、コーヒーの提供をしながら、自分が使っている豆の産地や農園のこと、コーヒーへの想いをプレゼンするんです。その中で、毎年出場されているバリスタさんがいて、豆の生産者、応援してくれているお店の仲間、色々なものを背負って出てきているわけなんですけど、その方のプレゼンが進むにつれて、どんどんと熱を帯びてきて、感情ものって声も震えて、涙をためながらプレゼンをされているのを見て。そんな想いを持ってコーヒー一杯を抽出してるって「すごい世界だな」と思いました。そういうコーヒーに関わる人たちの想いをもっとたくさんの人に知ってもらえたら、コーヒーの味わい方も変わってきますよね。

それに、僕は司会としてSCAJの舞台裏にもいたので、裏でバリスタのみなさん見ていたのですが、表彰式の前にファイナリストの方々6名が袖で並ぶんですね。後は結果を待つだけという時に、みんな肩をたたき合って「俺たち一年間頑張ったよな、誰が優勝してもいいよな」って、言葉は出さないですけどそんな風にお互いをたたえあっていたんです。

ただ、いざ順位が発表され始めると、バリスタのみなさんの目から涙が溢れてくるんですよ。それを見たら、僕も泣いちゃって(笑)。「すごい想いでやってるんだな」というのを改めて分かって、さらに応援したくなりましたし、尊敬もまた深まりました。